ビエール・トンミー氏は、自身が慕うある西洋美術史の講師が、『西洋美術史研究家ビエール・トンミー氏と巡るイタリア・フランスの美術を愛でる旅』なる旅行企画のゲラ刷りを見て、旅行参加希望を持っていることを、友人であるエヴァンジェリスト氏からのiMessageで知った。
そこで、旅行参加条件として以下の但し書を付けることとした。
『※ 但し、ビエール・トンミー氏が慕うある西洋美術史の美人講師に限る。尚、部屋は、特別貴賓室。でも、ベッドは『用』を足すのに十分な通常のダブル・サイズ』
しかし、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー氏が慕うあの『先生』よりも美人が参加申込をしてきていることも知らせてきたのであった。
「ああ、彼女を見たら、君はきっと驚くであろう!」
おおー!それほどの美人なのか。そんな美人も参加申込をしてきているのか?
「そうなのだ。ただ、一つだけ『問題』がある」
え?なんだ。旅行費用の問題か?『抽選』のことか?それとも、『3名1室』のことか?
「いや、『問題』は、旅行費用のことでも、『抽選』のことでも、『3名1室』のことではないのだ」
はあ?では、一体何が『問題』なのだ?
「年齢だ」
年齢?未成年なのか?ボクはロリコンではないぞ。尤も、20歳未満でも見た目が成熟していれば、そこはまあ……
「いや、逆だ」
というと…..
「そう、40歳以上なのだ。もう少し正確に云うと、50歳を少し超えているのだ」
なーんだ。…うーむ、でも、あの『先生』よりも美人だったら……
「では、『彼女』の写真を見るか?」
ああ、見るとも、見るとも!
「そうか。では、驚くなよ」
ああ、大丈夫だ。
「いや、それは無理だろう。君が驚くことは、10000%間違いがない」
ええい!気を持たせるではない!早く見せろ!
「そうか。では、いいか、この人だ」
おおおおおおおおおおおー!
「ほら、みろ」
いやあ、これはあ……….
「そうだ。『彼女』は、そう、マダム・トンミーだ。君の奥さんだ」
ど、ど、ど、ど、どうして妻が…….
「誰かの仕業で、奥様の手にも、『西洋美術史研究家ビエール・トンミー氏と巡るイタリア・フランスの美術を愛でる旅』なる旅行企画のゲラ刷りが渡ったのだ」
君だなあ。君が妻にゲラ刷りを渡したのだろうが!
「いや、知らん。それよりもどうするのだ?あの『先生』を選ぶのか?それとも奥様か?はたまた、『3名1室』を強行するか?」
いやいや、どれも無理だあ!あああああ、どうすればいいのだ!?どうしてくれるのだああ!!!!!!
エヴァンジェリスト氏に送るiMessageを打つビエール・トンミー氏の手が大きく震え、MacBook Airのキーボードが、カタカタと音を立てた。
「どうしたの、アータ?」
いきなり背後から声をかけられた。
(続く)
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