2021年2月11日木曜日

バスローブの男[その101]

 


「アータ、バスローブ洗濯してるんでしょ?」


風呂の脱衣場で、バスローブが回る洗濯機の中を覗き込みながらマダム・トンミーが、夫に訊いた。


「ああ、そうだけど」


ビエール・トンミー氏は、警戒しながら答えた。


「でも、どうして洗濯機を回してるの?」

「へ?」

「いつもの洗濯手順と違うんじゃないの?」

「は!?」

「アータ、バスローブは、いつも浸け置き洗いじゃなかった?確か40度で21時間したこともあったでしょ」

「うっ…」

「40度で7時間浸け置き洗いして、あまり白くならなかったって、それをもう1回、それでもまだ白くないって、更にもう1回、合計3回で21時間。それだけ徹底して40度浸け置きをしたらバスローブは真っ白で、電気を消した脱衣所の暗闇でも白く光るようになった、と大喜びしていたじゃない」




「あ…確かに…」

「なのに今日は、どうしていきなり洗濯機でバスローブを洗ってるの?」

「あ…あ…う…」


前夜、NHKの番組『ヒューマニエンス』の『”体毛”を捨てたサル』で、『インモー』の研究をしていたことを、そして、『研究』熱心のあまり『興奮』してしまい、バスローブに『染み』がついたことを、妻は知らない。



(続く)



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