「アータ、バスローブ洗濯してるんでしょ?」
風呂の脱衣場で、バスローブが回る洗濯機の中を覗き込みながらマダム・トンミーが、夫に訊いた。
「ああ、そうだけど」
ビエール・トンミー氏は、警戒しながら答えた。
「でも、どうして洗濯機を回してるの?」
「へ?」
「いつもの洗濯手順と違うんじゃないの?」
「は!?」
「アータ、バスローブは、いつも浸け置き洗いじゃなかった?確か40度で21時間したこともあったでしょ」
「うっ…」
「40度で7時間浸け置き洗いして、あまり白くならなかったって、それをもう1回、それでもまだ白くないって、更にもう1回、合計3回で21時間。それだけ徹底して40度浸け置きをしたらバスローブは真っ白で、電気を消した脱衣所の暗闇でも白く光るようになった、と大喜びしていたじゃない」
「あ…確かに…」
「なのに今日は、どうしていきなり洗濯機でバスローブを洗ってるの?」
「あ…あ…う…」
前夜、NHKの番組『ヒューマニエンス』の『”体毛”を捨てたサル』で、『インモー』の研究をしていたことを、そして、『研究』熱心のあまり『興奮』してしまい、バスローブに『染み』がついたことを、妻は知らない。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿