[ベンツで灯油(続き3)]
「今、ベンツで灯油を買いに来た夫婦もんは、君のまわしものか?」
と、スーパーの駐車場で夜間の灯油の給油担当として、ベンツで灯油を買いに来た夫婦に給油を終えたエヴァンジェリスト氏が、友人のビエール・トンミー氏に、更に挑戦的なiMessageを送ったのは、その夫婦ものの態度の悪さにムカついたからであった。
自分への嫌がらせの為、友人が送り込んできた、と解釈してみせたのだ。だが…
「はああ?第一ワテのところは灯油を使わんで」
ビエール・トンミー氏の相変らず妙な関西弁の返信は、素気無いものであった。
「ベンツに乗るもんは、灯油なんか使ってはいかんのではないか?」
話に乗ってこない友人の気を引こうと、エヴァンジェリスト氏は、自らが取り扱う商品に対して、わざと差別的な言葉を使った。
「はあ?そうかあ?」
「ああ、そうだとも、ベンツに乗るようなセレブは、石油ストーブなんか使わず、家の暖房は、セントラルヒーティングと云うのか、なんかそんなもんでコントロールしているのではないのか?」
「ああ、ワテの家は全部の部屋がガスの床暖房やで。トイレと玄関と洗面所と脱衣所はは除くやけどな」
「トイレと洗面所と脱衣所は、どうしているのだ?」
「トイレは、便座が暖かくなっとるで。洗面所は、床暖房の部屋に続いとるから暖かいで。脱衣所は風呂場の天井にある暖房をつけて暖かくしとるで」
「おお!君は、やはりワシの期待通りの男だ。さすがベンツ・オーナーだ!」
「ところで、その夫婦もんの乗っておったベンツはなんや?」
「なん?」
「ああ、どの『クラス』やねん?」
「ベンツに『クラス』があるのか?」
「ああ、君かてベンツに小さいもんもあるのは知っとるやろ?」
「ああ、そう云えば、さっきのベンツも小さかったな」
「そうかあ、そりゃ、多分、『Cクラス』じゃろう、ふん」
iPhone SE のiMessageの画面からも、友人が『Cクラス』を鼻で笑ったのが、分った。
「君のベンツは、何クラスなんだ?」
「『Eクラス』だ。ベンツの王道やで」
「他には、どんな『クラス』があるんだ?」
「ああ、『Sクラス』、『Aクラス』、『Bクラス』と色々あるでえ。興味あんのんのか?」
「ある、ある、ある!教えてくれ!」
「しょうがあらへんなあ。友だちやさかいなあ」
かくして、エヴァンジェリスト氏は、ビエール・トンミー先生のiMessageによるベンツの『クラス講座』を受けることとなったである。
(続く)
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