バスローブの男［その98］

 

「ん？いや、BDを持っておくこともリスキーか。奥様に見つかるかもしれんものなあ」

エヴァンジェリスト氏が、iMessageでビエール・トンミー氏に危惧の念を伝えてきた。彼がビエール・トンミー氏の為に録画しておいたNHKの番組『ヒューマニエンス』の『”体毛”を捨てたサル』を焼こうとしているBD（ブルーレイディスク）のことである。

「いや、BDで頼む。HDDレコーダーに残しておくよりはいいだろう」

とiMessageで返信したビエール・トンミー氏には、バスローブが中で回っている眼の前にある洗濯機の円い窓が、BDに見えていた。

「まあ、録画している他の適当な番組と一緒に焼いておけば、万が一、見つかっても、エヴァちゃんが『何やら面白そうだから、見ろよ』と渡してくれたものだ、と云い逃れすれいいだろう」

「危険物だから、厳重管理はするつもりだが」

「そうだ！『ヒューマニエンス』の他の回も録画してあるから、一緒に焼いておけば、奥様に見つかっても、ああ、『ヒューマニエンスなのね』で済むだろう」

「『木は森に隠せ』だな　。カモフラージュで頼むぞ」

嬉しかった。純粋に嬉しかった。嫌味な友人に借りを作ってしまったことは悔しかったが、

「（『持つべきは友』、とは本当だ）」

あの『インモー』画像、『インモー』と云うあの女性ナレーター、女性アナウンサーの声を再び、眼にし、耳にすることができると思うと、思わず、

（続く）