「(『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』は、アメリカのゴールデングローブ賞で外国映画賞を受賞したし、アカデミー賞で監督賞と脚色賞にノミネートもされた秀れた映画だ)」
誰に言い訳するわけでもないが、ビエール・トンミー氏は、自分のそんな説明では自分自身を誤魔化せないことは知っていた。バスローブが中で回る洗濯機の音も聞こえなくなっていた。
「(でも、どんな秀れた映画でも、『インモー』が映ったことは事実だし…いや、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』が問題ではないんだ)」
『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』のことは知らなかった。後で調べ、それがゴールデングローブ賞で外国映画賞を受賞した名画であることを知っただけなのだ。
「(天下のNHKの番組で、ナレーターの女性や女性アナウンサーが何度も、『インモー』、『インモー』と云っていたのだ。ああ、ボクは、そのことに興奮してしまったんだ!)」
今も頭の中に、NHKの番組『ヒューマニエンス』の『”体毛”を捨てたサル』で『インモー』、『インモー』と云う女性の声が回る声が聞こえ、思わず、両脚を窄めてしまう。
「(番組の中で、アナウンサーが、『アソコは縮れてる』と云ったが、優秀な『インモー』研究家のボクは、これは自分の『インモー』を頭に浮かべながらの発言だな、と看破した)」
更に、自分もそのアナウンサーの『インモー』を頭に浮かべたことを思い出す。
「(なのにい…)」
ビエール・トンミー氏は、歯軋りした。
「(ああ、折角、録画したのに消してしまった…)」
『ヒューマニエンス』の『”体毛”を捨てたサル』は、間違って消してしまったのではない。
(続く)
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