「(月にせいぜい5万円くらいのはずだ。なのに…)」
バスローブが中で回る洗濯機の音とiPhone X の着信音『ハロー』とを耳にしながら、ビエール・トンミー氏は、唯一の有友人であるエヴァンジェリスト氏の貧しい生活を思った。着信音『ハロー』は、エヴァンジェリスト氏からのiMessageのものだからである。
「(なにしろ時給は、1,013円だろうに)」
エヴァンジェリスト氏は、年金だけでは生活できず、『スーパー・マン』として働いているのだ。シルバー人材センター経由で、『スーパー』で、カートやカゴの整理、灯油の給油、資源ゴミの整理をしているのだ。時給は、ビエール・トンミー氏の記憶通り、東京都の最低賃金1,013円で、月の労働時間は50時間程度、つまり付きの収入は5万円くらいなのだ。
[参考]『スーパー・マン』は、『スーパーマン』か!?[前編]
[参考]『スーパー・マン』は、『スーパーマン』か!?[後編]
「(なのに、別荘を持つだなんて!)」
ビエール・トンミー氏は、以前、エヴァンジェリスト氏が勝手に送ってきた、その実兄(エヴァンジェリスト氏は、次兄であるその兄を『ヒモ君』と呼んでいた)とのiMessageの続きを思い出す。
「(なにが、軽井沢、鎌倉だ!シドニーもだって!)」
エヴァンジェリスト氏は、『ヒモ君』に、別荘を持つと突然言い出し、『ヒモ君』に、その別荘を使ってもいい、行くには自分の専用機も使っていいとホラを吹き、『ヒモ君』も、期待し、自分の奥さんと使わせてもらうと返していたのだ。
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(ヒモ君)『テンシ』子[ヒモ君の奥さん、エヴァの兄嫁である]さんが、エヴァ君は「関東の上沼恵美男」と言っています。
(エヴァ)はて、その心は?
(ヒモ君)大阪の上沼恵美子さんは、大口を叩く事で有名です。
(エヴァ)ああ、そういうことですか。
しかし、上沼恵美子は、かなり儲けてるはずですから、エヴァ君(自分のことである)とはちょっと違うかもしれません。
(ヒモ君)いえいえ、エヴァ君も今からが勝負です。
(エヴァ)勝てば大口ではなくなりますね。
モナコにも別荘を持ちます。
(ヒモ君)モナコも良いですね。その通りだ!頑張ってください!
(エヴァ)頑張らずに結果だけ欲しい。
(ヒモ君)人事を尽くして天命を待ちましょう
(エヴァ)何も尽くさず天命だけ早く欲しい。
ハワイには別荘はもちません。雀と鳩が多過ぎるので。
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「(『テンシ』子さんにはお会いしたことはないが、『上沼恵美男』とは上手いことを云う人だ。しかも、けなしているようで、実は、エヴァの奴への愛情がある)」
そう思った。ビエール・トンミー氏は、大学受験で広島から上京した際、エヴァンジェリスト氏のお兄さん、そう、『ヒモ君』にはとてもお世話になり、エヴァンジェリスト氏と『ヒモ君』とのiMessageで、『ヒモ君』の優しさを思い出したが、その夫人(再婚した相手)である『テンシ』子さんの優しさも読み取り、ほのぼのとした感じを持ったのだったが….
「(なのに、エヴァの奴、戯けたことを抜かしてきた)」
エヴァンジェリスト氏は、彼の次兄である『ヒモ君』との『別荘』に関するiMessageの後に、こう書いてきたのだ。
「(ボクは、別荘で、バスローブを着たい。君がいつもそうするように)」
そして、そのイメージ画まで送ってきたのだ。
(続く)
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