2021年2月4日木曜日

バスローブの男[その94]

 


「トゥルントゥ」


風呂の脱衣場に置かれた洗濯機の前に立つビエール・トンミー氏のiPhone X で、着信音『ハロー』が鳴った。


「(は?)」


着信音『ハロー』を設定しているのは、友人のエヴァンジェリスト氏からのiMessageだ。


「(アカプルコにも別荘を持とうかと思う、とか、またどうせクダラン話だろう)」


エヴァンジェリスト氏は最近、分不相応にも、別荘を持ちたい、と云い出していたのだ。


「(実兄とあんなiMessageのやり取りをするとは、貧乏なくせに暇な奴だ)」


ビエール・トンミー氏は、以前、エヴァンジェリスト氏が勝手に送ってきた、その実兄(エヴァンジェリスト氏は、次兄であるその兄を『ヒモ君』と呼んでいた)とのiMessageのやり取りを思い出す。




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(エヴァ)軽井沢と鎌倉に別荘を持とうと思います。


(ヒモ君)期待しています。『テンシ』子さん[ヒモ君の奥さん、エヴァの兄嫁である]と二人でお邪魔したいです。


(エヴァ)ああ、いつでも使って下さい。シドニーにも持ちますから、そちらも。


(ヒモ君)益々期待が膨らんできます。


(エヴァ)ヨーロッパにもどこか持ちます。


(ヒモ君)『テンシ』子さんと二人で行sく、行く!


(エヴァ)海外に行く場合には、ボクのプライベート・ジェットを使って下さい


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エヴァンジェリスト氏と彼の次兄である『ヒモ君』とのiMessageでのやり取りをそこまで読み、


「(エヴァの奴もエヴァの奴だが、あの男にして、あの兄あり、というところだなあ)」


と思ったことも思い出した。


(続く)




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