「キャッ!なにすんの!」
『珍宝の國記念學院』と思しき學院の三年二組の教室だ。
「レスリングしようぜ!」
シンノスケが、コウメに後ろから抱きついたのだ。
「ふざけんな!」
「ふざけていねえーよ。仲良しは、レスリングするんだぜ」
「なによ、それえ」
「ゆうべ、父ちゃんと母ちゃんが、布団の上でレスリングしてたんだ」
「ええー?!」
「父ちゃんが、母ちゃんに後ろから抱きついてんだ。おしっこに起きてトイレに行ったら、父ちゃんたちの部屋からなんか騒ぐ声がしたから、入ったんだ。そしたら、二人とも、裸で……」
「へえー、裸でえ?」
「そうさ。裸の父ちゃんが、裸の母ちゃんに後ろから抱きついてたんだ」
「それ、レスリングなの?」
「オレ、訊いたんだ、何してるのって?だったら、父ちゃんがレスリングだってさ。アマレスっていうんだって。オリンピックで、吉田沙保里や伊調馨が、メダルとったやつだって」
「ふーん」
「仲のいい夫婦はみんなアマレスするんだって。だから、コウメ、オレたちもアマレスしよ!」
「アタシは、あんたの奧さんじゃあないわよ!」
「いいじゃん」
シンノスケとコウメのやり取りを口を開けて聞いている少年がいた。
(続く)
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