2017年4月3日月曜日

フテイ愁訴【ビエール・トンミー氏の友情】




今度の土曜日に(2017年4月8日)会ってやることにした。

翌週から、また母校(ハンカチ大学)のオープンカレッジ(西洋美術史)に通うので、本当はそれどころではないのだ。

オープンカレッジ通いも、もう4年目になるのだが、今でも緊張するのだ。だって、●●●子先生にまたまたお会いできるのだ。エヴァの奴のことなんか気にしている場合ではない。

しかし……..

「明日がまだ日曜で良かった」

4月最初の土曜日に(2017年4月1日)、エヴァンジェリストは、こうiMessageを送ってきたのだ。

奴は病気だ。いや、3月で産業医面談は一旦、終了となったので、『奴は病気だった』というべきであろうか。

「ビエールよ、最近、起床時に虚脱感が酷く、会社に行くのがますます嫌なのだ」

エヴァンジェリストは、昨年(2016年)、産業医から『仕事依存症』と診断されたのだ。

本人は、『オレは仕事は好きではない、いや、大嫌いだ』とは云っていたが、出張先のホテルで出張報告を書いてはメールし、毎週、木曜日には週報を書く為、徹夜をしていた。

そして、土日は土日で、更に詳細な報告書を書いており(毎週、50-60ページ書くなんて尋常ではない)、一週間、確かに働き詰めであった。

通勤電車で、立ったまま意識を失いかけたり、つり革にぶら下がった状態で、『PDFフィアルを開こうとする』なんて理解不能な体調になっていたのだ。

「起床前、微睡みの中で、仰向けで寝ている状態から、両肘をベッドにつけ、上半身を起こしているようなのだ。しかし、起き上がることもできず、さりとて、また寝ることもできない。毎朝、その状態をしばらくの間、続けているのだ」

『仕事依存症』と云うと、病気とは思われず、仕事好きな人とか、仕事に追いまくられている状態、という程度にしか思われないかもしれないが、それは、『立派な病気』なんだそうだ。エヴァンジェリストは、産業医の先生にそう云われたそうだ。

「また、病気になりかけているのかもしれない」

そうだ、確かにそうかもしれない。昨年、『仕事依存症』と診断される前、半年余り、奴からは仕事の愚痴しか聞かなかった。

しかし、産業医から、強制的な2週間の休養を命じられ、担当案件を一切無くされてから、徐々に奴は仕事の話を殆どしなくなり、『健康』を取り戻していった。

「後2年、持つだろうか?」

エヴァンジェリストは後2年で65歳、再雇用も満期となるのだが、『起床時に虚脱感が酷く、会社に行くのがますます嫌』になると、確かに、後2年、持たないかもしれない。

病が再発しかけているのかもしれない。

「エヴァよ、今度の土曜日に会おう!4月8日だ」

友だちなのだ。そう云うしかないではないか。

「おお!本当か!そうか、そうか」
「ああ、本当だ。君に会いたい」
「おお、そうか。仕方ないなあ。じゃあ、会おうか、会ってやるか」
「んん?会ってやるか?んん?」
「いや、冗談だ。有難う、君の友情に感謝する」
「いやいや、ボクも暇だし、また、『沈黙』について君と語りたいからな」





「ビエちゃん、君はどうしてそんなに優しいのだ。なのに、ボクはダメな奴だ。そう、ボクは、フテイ・シューソなのだろう」
「え?不貞?





ドキッとした。そして、思わず、訊いたのであった。

「はあ?ボクは不貞なんかしていない、君とは違う」
「いや、ボクも一穴主義だ」

しまった。『不定愁訴』だ。

「『不定愁訴』で『不貞』を思い浮かべるのは、何か疚しいことでもあるのだろう」
「いや、『フテイ』の後がよく聞き取れなかったのだ」
「聞き取れなかった?ボクたちは今、iMessageのやり取りとしているのだぜ」

しまった、しまった。奴の罠にはまったのだ。

●●●子先生とのことが頭にあるからだろう、『不貞』なんて言葉が浮かんでくるのは」

病再発のふりをして、要は、『フテイ・シューソ』から『不貞』に結びつけようとしたのだ。

●●●子先生は素晴らしい先生だ。しかし、ボクがオープン・カレッジに通うのは純粋に、学問的好奇心からなのだ」
「君は最近、●●●子先生というかマダム・●●の夢をよく見るらしいではないか」





「むむ...」

完全に嵌められてしまった。

エヴァっていう奴は、『ビエちゃん、お休みなさい、チュッ、チュッ』なんてメッセージを送ってくる奴だったのだ。




「君って奴は……!」
「……でも、会ってくれるよね、土曜日に?」

そうか。そうなのか、馬鹿なことを云っている(メッセージしている)ふりをしているが、『不定愁訴』は本当なのだ。

友よ、ああ、友よ!







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