「妻よ、許してくれ、俺はもう、我慢できない!」
「何が、妻よ。いつもは、アタシのこと『君』って云うのに」
「?…..???」
ビエール・トンミー氏は、押し倒した女の顔を見た。
「……..」
「アータ、どうしたの素っ裸になって?」
ど、どうして、妻がここにいるのだ!?
妻はいつ、福岡まで来たのだ?JANAホテルにいることがどうして分ったのだ?どうやって、部屋に入ったのだ?
「アータ,どうして『元気』になってるの?ん、もう!」
「いや、違うんだ」
「え?何が違うの?」
「いや、だから、違うんだ。マッサージだ」
「え?マッサージ?」
「ああ、彼女には体をほぐしてもらっていただけなんだ」
「彼女?だれ、それ?」
「へ?!」
ビエール・トンミー氏は、体を起こし、周りを見た。
自宅であった。ビエール・トンミー氏は、自宅のベッドの上にいた。何が起きたのだ?
「夢か….夢だったのか…..」
そう云えば、もともと変だったのだ。自分はもうリタイア(退職)しているのに、出張なんかするはずがなかった。
iPhoneのある時代に、iBookがいいも悪いもなかった。iBookが使われてた時代には、まだiPhoneは発売されていなかったのだ。
エヴァンジェリスト氏と同じ飛行機に乗っているのも、偶然過ぎであった。
それに、なんだ『JANA』って!JALでもない、ANAでもない。JALとANAを合わせたような、そんな適当な名前の航空会社は、今も昔もありはしなじゃないか!
「あら、夢を見てたの?」
妻は、ベッドに押し倒されたまま、そう云った。
「夢でもいいわ。アータが久しぶりに『元気』になって。ふふ。ふふ」
妻は、頬に笑みを浮かべ、夫のコケシのマムシ、マムシのコケシを突いた。
「ウッ!」
夫は、呻き声を上げた。
「いいわ、後で。Windowsでアイコン変えるのは、どうするのだったか、もう一度、教えて。…..でも、『コノ』後でね。ふふ。ふふ」
妻は可愛い。幾らでもWindowsを教えてやるぞ!そうだ、妻との出会いもWindowsだったのだ。
妻とは同じ会社の同僚であった。しかし、自分はシステム部、妻はマーケティング部、普段、接点はなかった。
しかし、あるシステムのインストールでマーケティング部に行った時、そこには自分より10歳も若い女性がいた。美しい女性であった。後で、会社のマドンナと呼ばれる女性であったことを知った。
システムのインストールを終えようとした時、マドンナが声を掛けて来た。
「Windowsですか?」
「は?」
「これ、Windowsですか?」
マドンナは、自分の席のPCを指して云った。
「これ(Windows)使い辛いんですう」
「そうかなあ…..」
「ん、もう、使い辛いんですうう」
「そう云われても….」
「責任とって下さい!」
「へ!?責任?」
「ん、もう、何回も云わせないで。いいから、今度、オ・シ・エ・テ!Windowsの使い方をね」
……….そう、かくして、ビエール・トンミー氏は、そのマドンナを妻とすることになったのだ。
Windowsは使い辛い。そう思う。でも、だからいいんだ、Windowsは。自分は、Windowsが大好きだ!
(おしまい)
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