「エヴァさん、曲がれるよね？」
列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、長州力が後に新日本プロレスから全日本プロレスに移るのは、新日本プロレスに対する裏切りという『曲がったこと』をしたのではない、と知ることになるこを、まだ知らなかった。
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1981年、上池袋の下宿の隣室の隣室に住む50歳台と思しき『お父さん』に頼まれて、『お父さん』のベッドを『上福岡』にある『お父さん』の自宅まで運ぶべく、エヴァンジェリスト氏は、ベッドを運ぶ2トン・トラックの助手席に乗ったのであった。
しかし、『お父さん』が運転するそのトラックは、川越街道で、直ぐ前を走る乗用車にぶつかったのである。
ぶつかった、というよりも、『触れた』と云った方が正しいくらいの衝突であったが、その『事故』が起きた場所は、交差点であり、その交差点には交番があったのだ。警察の眼の前で『お父さん』は、『事故』を起こししまったのだ。
トラックを降り、『お父さん』は、被害者の乗用車の人と一緒に交番に向って行っていた。
エヴァンジェリスト氏は再び、交番の警官を目にし、『加害者』という言葉以上の言葉が頭に浮かんで来た。
「犯罪者……そうだ、『お父さん』は犯罪者になってしまったのだ。善良な人なのに。夜もバイトをする程、頑張って働いているのに」
そして、警官と何やら話している『お父さん』の姿を見ながら、エヴァンジェリスト氏は、あることに気付いた。
「あ！........ボ、ボ、ボクは、加害者、犯罪者である『お父さん』の運転するトラックに乗っていたんだ！」
動悸がしてきた。
「ボ、ボ、ボクも、加害者、犯罪者になるんだろうか？」
エヴァンジェリスト氏の脳裏には、ある男の顔が浮かんできていた。
「いや、ボクは、同乗していただけだ。犯罪者にはなるまい。ボクは、アイツとは違うのだ」
そう、アイツ、友人であり、犯罪者（駐車違反の犯人）ともなったビエール・トンミー氏と自分は違う、と必死で思いこもうとした。
しかし、自身が加害者、犯罪者になった訳ではないものの、加害者側の人間、犯罪者側の存在となったことに動揺したエヴァンジェリスト氏は、その後のことをよく覚えていない。
『お父さん』は逮捕されることなく、トラックに戻り、
「悪かったね。面倒に巻き込んじゃって」
と云ったような気がする。
被害者も、自分が急にブレーキを踏んだから、と自覚していたので大事にはならなかったが、後からムチウチが出てくることもあるから云々（デンデンではないよ、アベくん）、と説明されたのであったかと思う。
そして、『お父さん』の上福岡の家まで行き、ベッドを二人で降ろし、家の中まで運び、またトラックで上池袋まで戻ったのであったはずだ。
バイド代は、確か1万円もらったように思う。
…………この『トラック事件』により、『お父さん』と親しくなることを、エヴァンジェリスト氏は、その事件の前年（1980年）の『泣き声事件』の時にはまだ知らなかった。
しかし、まだ親しくはなかったが、『泣き声』が、『お父さん』のものでないことに確信はあった。
それは………
（続く）
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