「最初から、『ついに』と申し上げていますが……」
ビエール・トンミー氏付の特派員は、不満を顔に露わにし、エヴァンジェリスト氏に反論した。
「言い訳はいい。早く『ケツロン』を云うのだ。ヒトサシユビKはいつも『ケツロンから云うとですねえ』と云っているぞ」
「でも、ヒトサシユビK氏は、一向に『ケツロン』を云わないのでしょ?」
「ああ、その通りだ。最後まで聞いても『ケツロン』が分らないことが多い」
「だったら、ヒトサシユビK氏のことを持ち出す必要はないでしょう」
「『ケツロン』から云おうとする姿勢は真似るべきなのだ。要するに、ビエールは何をしたのだ?」
「『ケツロン』から云うとですねえ」
「余計な物真似をするのはよせ」
「ビエール・トンミー氏は、ついに『壁ドン』をやったのです」
「それはもう聞いた。要するに、その『壁ドン』は何なのだ?」
「『ケツロン』から云うとですねえ。クルマです」
「は?クルマ?女性をクルマに連れ込んで、クルマの内壁に押しやり『壁ドン』したのか?その女性は、まさか『●●●子先生』ではあるまいな?」
「いえ、ビエール・トンミー氏は、来たる4月9日からまた『●●●子先生』の講義を受講するようですが、『壁ドン』したのは、『●●●子先生』ではありません」
「では、アグネスか?アグネスに、『壁ドン』と云うよりも『壁ドンドン』をしたのではあるまいな。中川努先生の教えにように」
「いえ、アグネスにはもう関心はないようです。いや、いや、混ぜかえさないで下さい」
「じゃあ、いつもゴミ集積所で顔を合わせる近所の巨乳の奥さんか?」
「違います!女性をクルマに連れ込んで『壁ドン』したのではありません。駐車場でクルマをバックさせていたら車止めを外して壁に『ドン』としたのです」
「クダラン、実にクダラン」
「ああ、貴方は貧乏人でクルマを持っていないので、クルマの『壁ドン』はしたくてもできないでしょう。そもそも運転免許も持ってませんものね。ふふ」
「クッ!!!.......ワシは、『クルマで壁ドン』なんてチンケなことはせん。ワシは、『クルマでクルマにドン!』したことがあるのだ。ハハーハッハッハッハッハー」
そうだ。エヴァンジェリスト氏は、その昔(1981年)、上池袋の下宿の隣室の隣室に住む50歳台と思しき『お父さん』に頼まれて、『お父さん』のベッドを『上福岡』にある『お父さん』の自宅まで運ぶべく、ベッドを運ぶ2トン・トラックに乗った際に、そのトラックが、
「ドン!」
と、直ぐ前を走る乗用車にぶつかったのだ。
「ハハーハッハッハッハッハー」
高笑いするエヴァンジェリスト氏を、ビエール・トンミー氏付の特派員は冷ややかに見凝め、呟いた。
「自分で運転していた訳でもないくせに」
(おしまい)
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