2019年2月28日木曜日

住込み浪人[その11]







「膨らんでるう!」

チェック柄のロング・スカートに七分袖のミルク・ティー色のニットのセーターを着た女子学生は、明らかに嫌悪の感情を含んだ声を『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に向けた。

「(う、うーっ!)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、頬を紅に染めた。

「なんだい?」

チャコールグレイのジャケットの下に白いV字のシャツを着た男子学生が、訊いた。

「アソコよ!」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、女子学生に目を向けなかったが、彼女が自分の体のある部分を指差しているが分っていた。

「(ちが、違ううー!)」

歩を進めながら、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、心の中で必死に言い訳をした。

「嫌だああ。あの人、アタシのこと見てえ….」

背中に女子学生の声が聞こえる。

「(違うんだあ…..昨夜から….)」

そうなのだ。前夜、受験勉強をしている時から、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、自分でもそれがどこから湧き出てくるのか分らぬモンモンとした、泡のような感情、というか気分、というか何か得体の知れないものに、自分を抑えきれなくなっていたのだ。

しかも、何を抑えるのかも分らなかったのだ。ただ、右手が自身の体のある部分に自然と伸びていた。

「(勉強にならない……二浪目なのに)」

結局、三角関数の問題を解くのを途中で止め、モンモンを何とか抑えようと、布団に潜り込んだが、いつの間にか、意識を失い、木枠の窓から差し込む木洩れ陽に目覚めた時には、ソコが膨らんだままとなっていたのだ。


「(だから、違うんだあ!)」

背中が、女子学生の視線の矢に射られるのを感じながら、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、逃げるようにその場から立ち去った。いや、逃げるように、ではなく、実際、逃げたのだ。何も悪いことをした訳でもないのに。


(続く)



2019年2月27日水曜日

住込み浪人[その10]







「なーに、あの人?」

チェック柄のロング・スカートに七分袖のミルク・ティー色のニットのセーターを着た女子学生が、蔑むような眼差しを向けて呟いた…….少なくとも、そう云ったように、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年には聞こえた。

OK牧場大学の『住込み浪人』用の『寮』を出たところであった。

「(パジャマがバレたのか?)」

パジャマと云っても、茶色で、ジャージに近いものであり、パジャマとは見えないはず、と思っていたので、少々慌てた。

しかし…..女子学生と並んで歩いていた男子学生が云った言葉は、はっきり聞こえた。

「ああ、四田でジャージ着てる奴、初めて見たなあ」

チャコールグレイのジャケットの下に白いV字のシャツを着た男は、いかにも『OK牧場ボーイ』然とした学生であった。連れの女子学生も、いかにも『OK牧場ガール』然としていた。

「(う、うーっ!....パジャマであることはバレていないが、馬鹿にされた….ジャージ姿だと…..う、うーっ!)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、カップルの学生を避けるように、顔を下に向け、歩を進めた。自分をバカにした男女の学生は、自分とは違う、明らかにセレブな格好をしていた。

「(ボクだって、本当は、良家の子女なんだ。でも、今はまだ浪人だから…..)」



確かに、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の父親は、大会社の高収入な役員であり、母親も高貴な血筋の家から嫁いで来ている。だから、彼も確かに『良家の子女』と云えた。

と……

「なーに、あの人?」

今度は、先程の女子学生のはっきりとした声が聞こえた。


(続く)



2019年2月26日火曜日

住込み浪人[その9]







「あれ、ひょっとしてビエール君かい?」

OK牧場大学の1年生が、声を掛けて来た。

「(マズイ!)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、踵を返して、OK牧場大学の『住込み浪人』用の『寮』の共同台所前から去った。

「マズイ!マズイ!.......『オコガマシイ』って、どう書くんだったけ?」

『オコガマシイ』を漢字でどう書くのか、分らない。分らないのに、あのまま共同台所に入って行ったら、あのOK牧場大学の1年生に馬鹿にされるのだ。

「しかも、ボクは同い年ではない」

ビエール・トンミー青年は、二浪目であったから、あのOK牧場大学の1年生より一つ歳上だ。

「あの生意気な若造に馬鹿にされるなんて….」

だが、お腹が空いていたので、『そのまま』、つまり、パジャマを着たまま、OK牧場大学の『住込み浪人』用の『寮』を出た。




(続く)


2019年2月25日月曜日

住込み浪人[その8]







「書けたあ…..」

自らの掌に漢字を書いた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ため息をついた。

「『オコタル』は、『怠る』さ。そのくらい書けるさ」

他の『住込み浪人』二人が、同い年のOK牧場大学の1年生に漢字の書き取りの指導を受けているのを見ていたのだ。

「じゃあさあ、『オコガマシイ』って書けるかなあ?」

OK牧場大学の1年生は、口の端を歪め、『住込み浪人』二人に対して嘲るような言い方をした。

「(『オコガマシイ』?)」

ビエール・トンミー青年は、両方の黒目を上げた。



「あれ、誰かいるの?」

OK牧場大学の1年生が、振り向きながら云った。


(続く)



2019年2月24日日曜日

住込み浪人[その7]







「君たち、こんな漢字も書けないの?」

『住込み浪人』ではない若い男が、『住込み浪人』二人を叱っていたのだ。

「『オコタル』って、分らない?書けないの?」

どうやら、『住込み浪人』二人は、食卓で、漢字の書き取りをしているらしかった。



「君たち、まさに高校時代、勉強を『オコタッテ』いたんじゃないの!?」

『住込み浪人』ではない若い男は、両手の掌で、食卓を『バーン!』と打った。

「ボクねえ、君たちと同い年だよ。普段は、目吉にいるんだけど、大学に頼まれたからさあ、今日、ここにわざわざ来た訳よ」

『住込み浪人』ではない若い男は、OK牧場大学の1年生のようだ。OK牧場大学の教養課程は、ここ四田ではなく、目吉にあるのだ。

「『オコタル』も書けなくて、大学受験しようなんて『オコガマシク』ないかい?」

そのやり取りを聞いていた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、左手を開き、その掌に右手の人差し指を当てた。


(続く)


2019年2月23日土曜日

住込み浪人[その6]







「あ..」

と声を発したが、ビエール・トンミー青年は、『そのまま』部屋を出て、OK牧場大学の『住込み浪人』用の『寮』の共同台所に向った。

「まあ、これを誰もパジャマだとは思うまい」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、パジャマを着たまま、部屋を出たのだ。彼のパジャマは、所謂パジャマパジャマしたものではなく、茶色で、ジャージに近いものであったのでパジャマとは見えないといえば、そうであったかもしれない。


「うっ!」

台所の入口で、ビエール・トンミー青年は、思わず唸った。

台所には、他の『住込み浪人』が二人いた。そこは、『住込み浪人』用の『寮』なのだから、それ自体は不思議ではなく、驚くことではなかった。

「(何をしているんだ?)」

台所には、他の『住込み浪人』が二人だけではなく、明らかに『寮』生ではない男、つまり『住込み浪人』ではない若い男が、1人いたのだ。

「君たちねえ…….」


(続く)



2019年2月22日金曜日

住込み浪人[その5]







「一応、OK牧場大学も受験はするつもりだが……」

浪人1年目をハンカチ大学構内にある『寮』で過ごしたビエール・トンミー青年は、前年も受験に失敗した。

「二浪は仕方ない。ハンカチ大学に入る為なら。でも、OK牧場大学の『住込み浪人』となるのは、我慢ならん!」

それまで寝ぼけ眼であったビエール・トンミー青年は、怒りで、ようやく覚醒した。

「クー」

お腹が鳴った。覚醒したら、腹が空いたようだ。



「よし!」

ビエール・トンミー青年は、布団から完全に立ち上がった。

そして、『そのまま』部屋を出て行った。


(続く)



2019年2月21日木曜日

住込み浪人[その4]







「幸い、皆実高校(広島県立広島皆実高校)の同級生がいないからよかったものの….」

浪人生ビエール・トンミー青年は、首を横に振った。

「浪人生が、どうして大学構内の庭掃除をしないといけないんだ!」



ハンカチ大学構内にある『寮』の入寮条件の一つとして、『大学構内の庭掃除をすること』というものがあったのだ。

「大学生活を謳歌する同世代の現役学生を横目にしながら、構内の庭掃除をすることで感じる屈辱感をバネに浪人生活を頑張らせよう、ということかもしれないが、あれでは、まるで『住込み』だ。そうだ、『住込み浪人』ではないか!」

しかし、前年は、その屈辱感は、ビエール・トンミー青年には効き目がなかった。

「その『住込み浪人』を、どうして、OK牧場大学でしないといけないんだ!」


(続く)



2019年2月20日水曜日

住込み浪人[その3]







「去年も屈辱だったが、今年は屈辱どころか、もう死んでしまいたいくらいだ」

浪人生ビエール・トンミー青年は、布団から上半身起こしたまま、頭を掻き毟った。



「ハンカチ大学の『寮』にいた方がマシだった」

ビエール・トンミー青年は、前年は、ハンカチ大学構内にある『寮』にいた。そこで、浪人生活を送っていたのだ。そこは、浪人生専用の『寮』であった。

「大学構内に浪人生専用の『寮』があるなんて知らなかった」

ビエール・トンミー青年に限らず、多分、世の誰も、大学構内に浪人生専用の『寮』があるなんてことは知らなかった。今だって知らないであろう。

「自分が入りたい大学の構内に住みつつ、そこで浪人生活を送るなんて思いもしなかった」

ビエール・トンミー青年は、自分の知らぬ間に、ハンカチ大学構内にある『寮』に入ることになっていた。当時、親は、広島にいたので、東京で浪人をするなら、どこかに下宿する必要はあった。親が、『寮』に入るよう手配してしまったのであったろうか?

「しかも、どうして、あんなことまでしないといけないんだ!?」

ビエール・トンミー青年は、憤慨した。


(続く)


2019年2月19日火曜日

住込み浪人[その2]







「去年は、ハンカチ大学にいたのに」

OK牧場大学構内にある『寮』の部屋で、お昼近くに目覚めた男は、不満げに、いや、不満を口にした。

「ボクの第一志望は、ハンカチ大学だ」

そうだ。男が大学受験にあたって第一志望としているのは、OK牧場大学ではなく、ハンカチ大学であった。

『第一志望としていた』のではなく、『第一志望としている』のである。

男がまだ出られないでいる布団の横には、ハンカチ大学の『赤本』(大学入試案内の本)が、投げ出されていた。



「OK牧場大学には、エヴァの奴がいるから、気に喰わん」

男の友人『エヴァ』(正式には、エヴァンジェリスト氏)は、そう、ここOK牧場大学の学生であった。

「そうかあ、今年は、ウチ(OK牧場大学)で浪人生活を送るのかあ」

この『寮』に入ることが決った時、エヴァンジェリスト氏は、高校の同級生であるビエール・トンミー氏に、しみじみとした様子で、そう云った。

「チクショー、エヴァの奴!」

男は、そう、ビエール・トンミー氏であった。後に、『インテリ・ヘンタイ』として鳴らすことになる男である。

しかし、この時はまだ、ビエール・トンミー氏は、浪人生であったのだ。


(続く)



2019年2月18日月曜日

住込み浪人[その1]




研究室棟の西側、学生食堂の北側の木々の生い茂る敷地の中に、それはあった。

「ふぁあーあ」

布団から上半身だけ起こした男は、欠伸をしながら、木枠の窓から差し込む木洩れ陽に目を細めた。



「(また、朝が来たか….)」

と思ったが、時計を見ると、もうお昼近い時間であった。

「わっかき陽がのぼーる時!」

外からこの大学のカレッジ・ソングが聞こえて来た。

「ふん、『若き陽』を自分の大学の中で唄うなんて、恥ずかしい」

男がいるのは、四田にあるOK牧場大学構内にある『寮』の部屋であった。

「しかし、何故、今年は、OK牧場大学にいないといけないのだ?」

自分がいるのは、OK牧場大学構内にある『寮』である認識はあったが、何故、そこにいるのかの認識はなかったのだ。

「みやこおーのどこおかーのハンカチーの里にい!」

男は、ハンカチ大学の校歌をハミングした。


(続く)


2019年2月17日日曜日

【設立?】ビエール・トンミー氏を応援する会[その14=最終回]







「君は、君の講演を聴く若い人たちに云いたいのだ。『貴方たちが、私の講演を聴く目的は何であるのか?』と」

iPhone X でiMessageを打つビエール・トンミー氏の親指は、一種の凶器となっていた。

「(ああ、もういいから!『ビエール・トンミー応援会』のことはもういいから!)」

友人の『攻撃』にエヴァンジェリスト氏の動揺は、極限に達しようとしていた。

君は、君の講演を聴く若い人たちに云いたいのだ。『貴方たちが、私の講演を聴く目的は、この場にいることではないはずだ。私の講演を聴いて何か得るものがあれば、それでいいのだ。その為には、講演会場を出て行こうと、居眠りしようと構わぬではないか』と」
「(止めてくれえええ!)」
「君は、君の講演を聴く若い人たちに云いたいのだ。『カタチに囚われるな。世間は、会社は、上司は、大人たちは、君たちにカタチを強いる。そして、君たちは、今の若い人たちは、そのことに疑問を持たず、いや、疑問を持ったとしても、それを面に見せず、黙して従う。それでいいのか?それで、本当にいい仕事ができるのか?それで本当にいい社会を作れるのか?世の中は、本当にそれでよくなるのか?』とな」
「(君は、怖ろしい男だ…..)」
「君は、そんな考えを噯気にも出さず、『カネ、カネ,カネ!』と叫ぶ。この偽悪者めが!」
「(いや、僕は、僕には『カネ』が必要なんだ…..)」
「もういいさ。分った。ボクが、会長になってやろう!」
「(え!?)」
「ボクが、『エヴァンジェリスト応援会』の会長になってやろうではないか」
「(え、え、え、ええーっ!)」
「そして、君への講演依頼は、ボクが受け、マネージメントをしてやろう」
「(おおー!)」
「講演にも随行してやろうではないか。そうすれば、ボクも日本各地を旅できるしな」


「(おお、友よ!我が友よ!)」

ビエール・トンミー氏は、右手に持つiPhone X を通して、友の涙を感じていた。


(おしまい)




2019年2月16日土曜日

【設立?】ビエール・トンミー氏を応援する会[その13]







「偽善も『罪』だが、偽悪も『罪』であることは、フランソワ・モーリアック研究家である君なら、分っているはずだ」

友であるエヴァンジェリスト氏宛に、iPhone X でiMessageを打つビエール・トンミー氏は、この男らしからぬ真面目なものとなっていた。

「(いや、僕の心は穢れている。僕は、金が欲しいのだ!)」
「君は、講演をする際に、冒頭、聴講者に云う。『講演の間、出入り自由。出て行くことも、その理由も云う必要はない。寝るのも自由。鼾をかくのも致し方ない。自分では鼾をかいていることに気付かぬから。でも、余りに煩かったら、隣の人が足で蹴るなり、後ろの人が頭をコツンと叩くなりして、起こして欲しい。質問も自由。但し、私がたじろぐ質問は禁止。でも、質問してみないと、私がたじろぐかどうかは分らないから、まあ、何を訊いても結構』とな」


「(ど、ど、どうして、そのことを…..)」
「聴講者は、君の言葉に唖然とする。そんなことを云う講演者は他にいないからな。しかし、君の言葉には深謀遠慮があるのだ」
「(ない、ない!そんな遠慮はない!)」
「君の脳裏からは、君の友人であるフランス人のJFT氏の行動が未だに離れない」
「(何を云いたいのだ?)」
「JFT氏は、君を含めた日本人数人との打合せ中、鉛筆を口にくわえ、パッコン、パッコンさせていた。そして、その内、急に席を立ち、何も云わず、会議室を出て行った。理工系のグラン・ゼコールである『エコール・ポリテクニーク』(École polytechnique)を出ているスパー・エリートとは思えぬ行動だ」
「(ああ、もういい….)」
「しばらくして、JFT氏は会議室に戻り、何食わぬ様子で、打合せに参加した。JFT氏は、打合せを途中抜けていたが、打合せには特段の支障はなかった」
「(ああ、その通りだ)」
「その時、君は思った。打合せは、その場にいることが目的ではない、とな」
「(止めろ!止めろ!)」



(続く)



2019年2月15日金曜日

【設立?】ビエール・トンミー氏を応援する会[その12]







「君という男は…….」

ビエール・トンミー氏は、iPhone X でiMessageを打ちながら、首を横に振った。

「(なんだ?な、なんなんだ?)」

エヴァンジェリスト氏の心中の返信は、動揺を見せた。

「ギアクシャめ!」
「『ギアクシャ』?」
「そうだ、偽悪者だ」



「(意味が分からん)」
「OK牧場大学大学院文学科フランス文学専攻の文學修士である君が、『偽悪者』を知らん訳がなかろう」
「(文學修士なんて、何の役にも立たん)」
君はしかも、心理小説の大家であるフランソワ・モーリアックを研究したのだ」
「(それがどうした?)」
「君が、65歳以降も講演活動を続けるのは、ただ金の為だけではない!」
「(うっ……)」
「君は、ボクに社団法人設立を薦めた。若い人たちに『ヘンタイ』文化を根付けさせる為、とな」
「(…ああ、それはもういい…..)」
「誤魔化すな!講演活動も、社団法人設立も、君には、ある考えあってのことなのだ」
「(だから、もういいのだ….)」
「ふん、偽悪者め!君は、若い人たちに云いたいのだ。若い人たちにわかって欲しい、変って欲しいのだ」
「(いや、金目当てだ。生活費を稼がなくてはいけないのだあ!)」



(続く)




2019年2月14日木曜日

【設立?】ビエール・トンミー氏を応援する会[その11]







「しかし、君は、『己を見る』男だ。君は、君の修士論文で書いた『己を見る』ということから逃れることのできない男だ。君は、貴乃花ではない。『エヴァンジェリスト応援会』なんて烏滸がましいことを知っている」

エヴァンジェリスト氏を攻めるビエール・トンミー氏のiMessageは容赦ない。

「(チクショー!)」
「だが、諦めきれない君は、『応援会』設立をボクの話にすり替えた。満たされているボクに『応援会』は不要だ」
「(いや、君は、『内田有紀』で股間に『異変』が生じなくなり、●●●子先生とも『お別れ』し、寂しい生活を送っているではないか)」
「少々、いや相当無理な理屈だ。そのことは君は分っており、じきボクが、そのことに気付くことも織込み済みだったのだ。そう、ボクに、君の方こそ『応援会』を設立すべきではないか、云わせようと思ったのだ」
「(この『インテリ・ヘンタイ』めが!)」
「君は更に、講演活動をボクに薦めた。自分の方が余程、講演活動に向いているのに。65歳になろうとする今も、そう今月(2019年2月)だって、日本各地で、6回も講演するではないか」
「(ああ、相当にハード・スケジュールだ)」
「これもボクに、君の方こそ講演活動をすべきではないか、とボクに云わせようと思ったのだ」


「(君という男は…..)」
「君は、貴乃花の講演料を聞いて舌舐めずりした。1回で300万円だものな、貴乃花は」
「(ああ….300万円とは云わないが….)」
「今の君の講演は、会社として無償で受けているが、65歳になってフリーとなれば、有償での対応となるのであろう」
「(幸い、少しは依頼がありそうだ。しかし、もっともっと依頼がないと、稼ぎにはならない)」
「ふふ、ふふ。ふふ、ふふ」
「(な、な、何が可笑しい!)」



(続く)