「アナタ、やっぱりロリコンだったのねえ。不潔!」
『松坂慶子』に酷似した女性の舌鋒は、それまで以上のものとなっていた。
「やめて!」
『ユキ』と呼ばれた少女が、『松坂慶子』に酷似した女性を制する『声』を発した。
「オジサンはそんな人じゃないわ。ええ、オジサンは、アタシを見ても、ママを見ても、そして、『松坂慶子に酷似したおば様』を見ても股間が『反応』するの。そのことをオジサンは知ってる。そして、そのことに苦しんでるの!」
「まああ!」
「『ユキ』、いいの、もういいわ」
「アタシ、オジサンのこと好きなの、もう離れたくない!」
「私だって!」
「ママもよ!」
「(んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!)」
股間の『異変』は頂点に達し、頭の中も『ホイコーロー』で炒められるキャベツのようにかき回され、ビエール・トンミー氏は、自分が意識を失ったような気がした………..
-------------------------
気がつくと、そこは、自宅の食卓だった。
「(ん?)」
ビエール・トンミー氏は、鼻に食欲をそそる匂いを感じた。
「(回鍋肉?)」
そうであった。その匂いは、回鍋肉であった。
「アータ、起きたの?もう少しで回鍋肉できるから待っててね」
マダム・トンミーが台所から、夫に声を掛けた。
「調理体験の回鍋肉だけじゃ物足りないものねえ」
「(そうかあ。そうだ、今日は、味の素の工場見学に妻と行ったのだ)」
頭の中で、『内田有紀』に酷似した女性、その娘の『ユキ』と呼ばれた少女、そして、『松坂慶子』に酷似した女性の像が渦巻いた。
「(ああ….ああ…..)」
彼女たちの『声』(心の中に聞こえてきたように感じられた『声』である)に翻弄されたのであった。
『アジパンダ®』ショップでは、翻弄が極みに達し、ついに意識を失ったような気がし、その後、どうやって自宅まで戻ったのか、記憶がなかった。
「(彼女たちは、実在したのだろうか?)」
味の素の工場見学に行ったことは間違いないようであったが、そこで、『内田有紀』に酷似した女性、その娘の『ユキ』と呼ばれた少女、そして、『松坂慶子』に酷似した女性と会ったのは、夢の中の出来事であっちょうな気がする。
「アータ、そう云えば、連絡先は聞いたの?」
「え?」
「ほら、『ユキ』ちゃんのママよ。今日、一緒に『ホイコーロー』を作った」
「え?」
夢ではなかったのだ。
「Macの使い方、教えてあげる約束してたじゃないの」
「あ…….」
電話番号もメールアドレスも聞いていなかった。
「あ……あ……..」
ビエール・トンミー氏の股間も項垂れた。
(おしまい)
0 件のコメント:
コメントを投稿