「だが、そんな『学生生活』を4年も続けると、流石の君もマズイと思った。●●●子先生の講義も一巡どころか二巡目を終え、三巡目に入るからだ。しかも君は、母校のオープン・カレッジ以外にも、カルチャーセンターでの●●●子先生の講義までも受講するようになっていたしな」
エヴァンジェリスト氏は、続けてビエール・トンミー氏に一方的にiMessageを送り続けた。
「(先生の講義は、幾度お聞きしても勉強になるのだ)」
ビエール・トンミー氏は、心の中で反論する。
「カルチャーセンターには、白いマスクに妙な形の帽子、レーバン風のサングラスという変装をして行ったが、君の体臭は消せない」
「(まあ、外出する時も、いつもパジャマだからな。勿論、オープン・カレッジもカルチャーセンターにも、ベッドの中で着ていたパジャマそのままで行った)」
「●●●子先生は、君の体臭というか、君の老人臭とパジャマの饐えたような臭気とが入り混じった独特の臭いにクラクラしたであろう」
「(え!?そうなのか?あの先生が?んぐっ!)」
「それは定かではない。ただ、●●●子先生が、君が『ヘンタイ』であることに気付いてきていたことは間違いなかったであろう。それ以上、受講を続けていると、警察に通報されるかもしれない。君はそう思った」
「(ボクは、確かに『ヘンタイ』だが、犯罪者ではない!)」
「そうして、君は泣く泣くオープン・カレッジの西洋美術史の受講を止めた。『ヘンタイ』だが、君はインテリだ。『インテリ・ヘンタイ』の君は、自らに迫りくる危険を察したのだ」
「(…….)」
「1年ほど前にある旅行会社が企画した『●●●子先生と巡る西洋美術史の旅』への参加も断腸の思いで見送った」
「(うう…うううううう……)」
「君はついに4年続けた●●●子先生との『関係』に終止符を打ったのだ」
「(…….)」
言葉を失ったビエール・トンミー氏は、左手にトースト、右手にコヒーの入ったマグカップを持ったまま、呆然とし、虚空に視線を送っていた。
(続く)
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