2019年2月16日土曜日

【設立?】ビエール・トンミー氏を応援する会[その13]







「偽善も『罪』だが、偽悪も『罪』であることは、フランソワ・モーリアック研究家である君なら、分っているはずだ」

友であるエヴァンジェリスト氏宛に、iPhone X でiMessageを打つビエール・トンミー氏は、この男らしからぬ真面目なものとなっていた。

「(いや、僕の心は穢れている。僕は、金が欲しいのだ!)」
「君は、講演をする際に、冒頭、聴講者に云う。『講演の間、出入り自由。出て行くことも、その理由も云う必要はない。寝るのも自由。鼾をかくのも致し方ない。自分では鼾をかいていることに気付かぬから。でも、余りに煩かったら、隣の人が足で蹴るなり、後ろの人が頭をコツンと叩くなりして、起こして欲しい。質問も自由。但し、私がたじろぐ質問は禁止。でも、質問してみないと、私がたじろぐかどうかは分らないから、まあ、何を訊いても結構』とな」


「(ど、ど、どうして、そのことを…..)」
「聴講者は、君の言葉に唖然とする。そんなことを云う講演者は他にいないからな。しかし、君の言葉には深謀遠慮があるのだ」
「(ない、ない!そんな遠慮はない!)」
「君の脳裏からは、君の友人であるフランス人のJFT氏の行動が未だに離れない」
「(何を云いたいのだ?)」
「JFT氏は、君を含めた日本人数人との打合せ中、鉛筆を口にくわえ、パッコン、パッコンさせていた。そして、その内、急に席を立ち、何も云わず、会議室を出て行った。理工系のグラン・ゼコールである『エコール・ポリテクニーク』(École polytechnique)を出ているスパー・エリートとは思えぬ行動だ」
「(ああ、もういい….)」
「しばらくして、JFT氏は会議室に戻り、何食わぬ様子で、打合せに参加した。JFT氏は、打合せを途中抜けていたが、打合せには特段の支障はなかった」
「(ああ、その通りだ)」
「その時、君は思った。打合せは、その場にいることが目的ではない、とな」
「(止めろ!止めろ!)」



(続く)



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