2019年2月18日月曜日

住込み浪人[その1]




研究室棟の西側、学生食堂の北側の木々の生い茂る敷地の中に、それはあった。

「ふぁあーあ」

布団から上半身だけ起こした男は、欠伸をしながら、木枠の窓から差し込む木洩れ陽に目を細めた。



「(また、朝が来たか….)」

と思ったが、時計を見ると、もうお昼近い時間であった。

「わっかき陽がのぼーる時!」

外からこの大学のカレッジ・ソングが聞こえて来た。

「ふん、『若き陽』を自分の大学の中で唄うなんて、恥ずかしい」

男がいるのは、四田にあるOK牧場大学構内にある『寮』の部屋であった。

「しかし、何故、今年は、OK牧場大学にいないといけないのだ?」

自分がいるのは、OK牧場大学構内にある『寮』である認識はあったが、何故、そこにいるのかの認識はなかったのだ。

「みやこおーのどこおかーのハンカチーの里にい!」

男は、ハンカチ大学の校歌をハミングした。


(続く)


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