(住込み浪人[その1]の続き)
「去年は、ハンカチ大学にいたのに」
OK牧場大学構内にある『寮』の部屋で、お昼近くに目覚めた男は、不満げに、いや、不満を口にした。
「ボクの第一志望は、ハンカチ大学だ」
そうだ。男が大学受験にあたって第一志望としているのは、OK牧場大学ではなく、ハンカチ大学であった。
『第一志望としていた』のではなく、『第一志望としている』のである。
男がまだ出られないでいる布団の横には、ハンカチ大学の『赤本』(大学入試案内の本)が、投げ出されていた。
「OK牧場大学には、エヴァの奴がいるから、気に喰わん」
男の友人『エヴァ』(正式には、エヴァンジェリスト氏)は、そう、ここOK牧場大学の学生であった。
「そうかあ、今年は、ウチ(OK牧場大学)で浪人生活を送るのかあ」
この『寮』に入ることが決った時、エヴァンジェリスト氏は、高校の同級生であるビエール・トンミー氏に、しみじみとした様子で、そう云った。
「チクショー、エヴァの奴!」
男は、そう、ビエール・トンミー氏であった。後に、『インテリ・ヘンタイ』として鳴らすことになる男である。
しかし、この時はまだ、ビエール・トンミー氏は、浪人生であったのだ。
(続く)
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