(住込み浪人[その6]の続き)
「君たち、こんな漢字も書けないの?」
『住込み浪人』ではない若い男が、『住込み浪人』二人を叱っていたのだ。
「『オコタル』って、分らない?書けないの?」
どうやら、『住込み浪人』二人は、食卓で、漢字の書き取りをしているらしかった。
「君たち、まさに高校時代、勉強を『オコタッテ』いたんじゃないの!?」
『住込み浪人』ではない若い男は、両手の掌で、食卓を『バーン!』と打った。
「ボクねえ、君たちと同い年だよ。普段は、目吉にいるんだけど、大学に頼まれたからさあ、今日、ここにわざわざ来た訳よ」
『住込み浪人』ではない若い男は、OK牧場大学の1年生のようだ。OK牧場大学の教養課程は、ここ四田ではなく、目吉にあるのだ。
「『オコタル』も書けなくて、大学受験しようなんて『オコガマシク』ないかい?」
そのやり取りを聞いていた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、左手を開き、その掌に右手の人差し指を当てた。
(続く)
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