(うつり病に導かれ[その12]の続き)
「うっ!」
何かに腹部を押され、ビエール・トンミー氏は、体を『くの字』に曲げた。
「うっ、うっ、うっ!」
半開きとなった瞼の間から、まさに星が飛び出した、と思えた。
「あ~れええ!あかんわああ」
間近で妙な関西弁が発せられた。
「(な、な、な、なんだ!?)」
体は『くの字』のまま、眼を開けた。
「ごめんなさい!」
ビエール・トンミー氏は、ようやく事態を認識した。診察室から出てきた、60歳台と思しきふくよかな女性が、よろめいたのか、座っていた自分の体に倒れてきたのだ。
「大丈夫ですか?」
付き添いの娘が、声を掛けてきていたのだ。
「だ、だ、大丈夫で…」
と云い掛けたものの、母親の方は、まだ倒れ込んできたままであった。
「はああ~、もうだめええ」
『だめ』と云う割には、元気な声で母親は、倒れ込んだまま弱音を吐く。
「ん、んっ!」
その時、ビエール・トンミー氏は、何かを感じたのだ。
(続く)
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