2020年2月18日火曜日

うつり病に導かれ[その19]






「陰性です」

ドクトル・ギャランドゥは、インフルエンザの検査結果を告げた。

「はああ……」

高熱のビエール・トンミー氏は、呆けた反応しかできない。

「風邪でしょう。解熱剤と咳や鼻水を抑える薬を出しておきます」

と、ドクトル・ギャランドゥは、電子カルテに入力を始めた。

「薬を飲んで、様子を見て頂きたいんですが、熱が高いようですから、明日の朝になっても38度を下回っていないようなら、再検査ですね」

と説明しながらも、PCのキーボードを叩くドクトル・ギャランドゥの手には、まだあの老婦人の柔らかな胸の感触が残っていた。

「(んぐっ!)」

その白衣の下の股間の『異変』を看護師ローラは見逃さない。

「(なに、ドクトルったら、男にも興味があるの!?)」


しかし、看護師の誤解を知る由もないドクトル・ギャランドゥは、老いてはいるが美男の患者の方を向くと、

「しかし、当クリニックは、明日は休診ですから、明日であれば、別の病院にいらして下さい」

と、老婦人に対してしたのと同じ説明をした。

「ふぁ~い…」

と、ふらふらと立ちがったビエール・トンミー氏は、医師に背を向け、診察室の出口に向ったが、

「うっ!」


(続く)



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