(うつり病に導かれ[その18]の続き)
「陰性です」
ドクトル・ギャランドゥは、インフルエンザの検査結果を告げた。
「はああ……」
高熱のビエール・トンミー氏は、呆けた反応しかできない。
「風邪でしょう。解熱剤と咳や鼻水を抑える薬を出しておきます」
と、ドクトル・ギャランドゥは、電子カルテに入力を始めた。
「薬を飲んで、様子を見て頂きたいんですが、熱が高いようですから、明日の朝になっても38度を下回っていないようなら、再検査ですね」
と説明しながらも、PCのキーボードを叩くドクトル・ギャランドゥの手には、まだあの老婦人の柔らかな胸の感触が残っていた。
「(んぐっ!)」
その白衣の下の股間の『異変』を看護師ローラは見逃さない。
「(なに、ドクトルったら、男にも興味があるの!?)」
しかし、看護師の誤解を知る由もないドクトル・ギャランドゥは、老いてはいるが美男の患者の方を向くと、
「しかし、当クリニックは、明日は休診ですから、明日であれば、別の病院にいらして下さい」
と、老婦人に対してしたのと同じ説明をした。
「ふぁ~い…」
と、ふらふらと立ちがったビエール・トンミー氏は、医師に背を向け、診察室の出口に向ったが、
「うっ!」
(続く)
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