2020年2月6日木曜日

うつり病に導かれ[その7]






「お母さんったら、先生を困らせないで」

外田有紀は、片手で、聴診器を当てられることを恥ずかしがる母親の肩をポーンと打った。

「先生、申し訳ありません」

母親の松坂慶美は、仕方なさそうに、ふくよかな体を窄め、片手ずつカーディガンを脱ぎ、ついで、その下に着ていたブラウスもゆっくりと脱いだ。



「(んぐっ!)」

ドクトル・ギャランドゥは、白衣の下で、再び、両足を窄めた。しかし、今度は対象が違った。

「(いやいや、違う、違うんだ!)」

と心の中で言い訳しながらも、眼は、松坂慶美の白い肌と、60歳台にはとても見えない豊かな胸から離れなかった。

「これも取らなあきまへんのやろ?」

と背後にいる娘に確認しながら、母親は、あっさりと胸に当てていたものを外した。段々、大胆になってきた。しかし、外したものは、その外し方以上に大胆だった。

「(んぐっ!)」

真っ赤だった。

「もう主人を亡くしてますのやけど」

訊いてもいないこと話す。


(続く)





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