2020年2月4日火曜日

うつり病に導かれ[その5]






「先生、時間です!」

診察室のドアを開け、看護師ローラが、ドクトル・ギャランドゥに、午後の診察開始を告げた。

「ああ…」

ドクトル・ギャランドゥは、PCのスクリーンセーバーを解除し、午後の最初の患者の電子カルテを開いた。



「松坂慶美……マツザカ・ヨシミ」

知らない名前だ。

「(どこかの芸能人みたいな名前だなあ)」

芸能界にはあまり興味はないが、松坂慶子くらいは知っていた。特段、好きな女優ではなかったが。

「(初診か)」

と、待合室側のドアが開き、

「……ふうう……」

恰幅のいい、若くはないが老女というにはまだ早い60歳台と思しき女が、息を漏らしながら、診察室に入ってきた。

「あ、そこにお掛けください」

入ってきたその患者に方に顔を向け、そう云った瞬間、ドクトル・ギャランドゥは、一瞬、身を引いた。

「(松坂慶子!)」

であるはずはなかったが、松坂慶子に酷似した女性であった。

「母なんです、先生」


(続く)



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