(うつり病に導かれ[その4]の続き)
「先生、時間です!」
診察室のドアを開け、看護師ローラが、ドクトル・ギャランドゥに、午後の診察開始を告げた。
「ああ…」
ドクトル・ギャランドゥは、PCのスクリーンセーバーを解除し、午後の最初の患者の電子カルテを開いた。
「松坂慶美……マツザカ・ヨシミ」
知らない名前だ。
「(どこかの芸能人みたいな名前だなあ)」
芸能界にはあまり興味はないが、松坂慶子くらいは知っていた。特段、好きな女優ではなかったが。
「(初診か)」
と、待合室側のドアが開き、
「……ふうう……」
恰幅のいい、若くはないが老女というにはまだ早い60歳台と思しき女が、息を漏らしながら、診察室に入ってきた。
「あ、そこにお掛けください」
入ってきたその患者に方に顔を向け、そう云った瞬間、ドクトル・ギャランドゥは、一瞬、身を引いた。
「(松坂慶子!)」
であるはずはなかったが、松坂慶子に酷似した女性であった。
「母なんです、先生」
(続く)
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