(うつり病に導かれ[その13]の続き)
「(んん?なんだ?」
ビエール・トンミー氏は、腹部に何か柔らかな、なんだかとても柔らかなものを感じた。
「(なんだ、これは?)」
倒れ込んだまま60歳台と思しきふくよかな女性が、そこもふくよかな胸をビエール・トンミー氏の腹部に押し当てていたのだ。
「(んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏の顔は真っ赤となった。
「母さん!早く起きて!こちらの方、とっても苦しそうよ。起きて!」
娘は、必死となって、母親の体を引き起こした。
「(んぐっ!....いや、違う!)」
ビエール・トンミー氏は、慌てて股間に両手を当てた。
「申し訳ありません。母のせいで」
娘が頭を下げた。
「いえ、違います!」
「え?」
「は?!いえ、大丈夫です」
「お腹、痛めました?」
と、娘が、ビエール・トンミー氏の腹部に手を当ててきた。
「いや…」
「直ぐに先生に診てもらいましょうか?」
その時、間近に迫った娘の顔を初めて見た。
「(内田有紀!)」
と思えた。
「(んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏の顔は、再び、真っ赤となった。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿