2020年2月28日金曜日

うつり病に導かれ[その29]






「(パクったようなものだった…)」

高校生だった頃のドクトル・ヘイゾーが書いた小説『怪人ジバコ』のことである。

「(北杜夫の『怪盗ジバコ』が好きだった…)」

しかし、ドクトル・ヘイゾーがパクったのは、『怪盗ジバコ』という小説だけではなかった。

「(生き方もパクろうとしたんだ)」



云うまでもなく、北杜夫は小説家であるが、医者でもあった。

「(医者になるには、医大に入らなくちゃいけないけど、医大に入っても、医者になっても作家にはなれるんだ…そう、思った)」

かくしてドクトル・ヘイゾーは、医大に進学、医者となったが、北杜夫のように作家になることはなかった。作家になる夢は、遠い昔の夢となっていた。

「(なのに、あのクダラナイBlogが!)」

そう、たまたま眼にすることになったBlog『プロの旅人』が、ドクトル・ヘイゾーに、遠い昔の夢を思い起こさせたのだ。だが、

「(『怪人』だなんて!しかも、色々と変装というか、変身をするなんて!)」

更に、『怪人』にせよ、『桃怪人』にせよ、増殖するのだ。『怪鹿』や『怪女』まで登場するなんて、破茶滅茶だ。


「(まさか『エロ仙人』まで出してくるとは!)」

しかも、『エロ仙人』に整形までさせることに愕然とした。

「(…負けだ。オレの負けだ。奇想天外を超えた破茶滅茶さ、更にそれを超えたクダラナさ…)」

恥じることなくクダラナイことを書く『プロの旅人』に負けた、と思った。

「(クダラナイことも突き詰めると、世界に読者を得ることができるのか…)」

『プロの旅人』は、世界に読者がいるらしいのだ。なのに、『怪人ジバコ』などという、ただ北杜夫の『怪盗ジバコ』をパクったような小説しか書けなかった自分が情けなかった。

「(………)」

と、診察室の椅子に座り、ドクトル・ヘイゾーが項垂れていた時であった。


(続く)





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