「くさーい!」
マーケティング部の女性社員が、鼻をつまみながら声を上げた。
「そう、臭いわ。この部屋、なんだか、とっても臭い!」
別の女性社員が、同調した。
「おお、なんだ、これは?誰か、オナラでもしたのか?」
次長が、席から立ち上がり、鼻に手を当てながら、周りを見回した。
「いや、これ、オナラじゃないでしょ。臭いけど、なんかムラムラしませんか?」
中堅の男性社員の一人が、深呼吸をするように臭いを鼻に嗅ぎ込んだ。
「ああ、オレも目眩がしてきたぞ」
課長が、喜悦の表情を浮かべた。
「でも、もう堪えられません。誰か窓を開けて!」
と、叫ぶ女性社員に、若手男性社員が、指摘した。
「ウチのビル、窓開きませんよ」
近代的なビルであったので、オフィスの窓は嵌め込みで開けることはできなかったのだ。
「じゃあ、ドアを開けて、早くう!」
という部内の喧騒に、マーケティング部の壁際に置かれたパソコンの前にいた美形の2人の男女が、顔を見合わせ、笑みを交わした。
(続く)
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