「(いいわ、裏投げで決めるわ!)」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、『逆さクラゲ』の部屋にある円形ベッドを見て、柔道家『チョチョシビリ』のあの投げ技で、これから一戦を交えるビエール・トンミー氏を打ち負かそうと考えた。円形リングで行なわれたアントニオ猪木と『チョチョシビリ』との異種格闘技戦で、『チョチョシビリ』が猪木を破った技である。
「(テーズ流のバックドロップでもいいわ)」
伝説のプロレスラーであるルー・テーズのバックドロップは、多くのプロレスラーが使う、相手レスラーを後ろに投げるようなものではなく、相手を持ち上げてその場で背中からマットに叩きつけるような、そう、柔道の裏投げに近いものであったのだ。
「ふふっ」
と、マダム・トンミーが、思わず口元を緩めたその時であった。
「うっ…」
半開きのその口が、いきなり何かに塞がれたのだ。
「(え!?何?何、何、何?)」
忙しなく瞬きしたマダム・トンミーは、顔面間近に人の眼を見た。瞳孔の真ん中でピンクの炎が燃えているような眼であった。
そして……
(続く)
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