2020年12月17日木曜日

バスローブの男[その49]

 


「ううーっ!」


獣の咆哮であった。ピンクの照明に満たされた『逆さクラゲ』の部屋に入った『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、その咆哮に驚くよりも、眼に飛び込んできたベッドに驚かされた。


「(え!?円形!)」


それは、円形ベッドであった。


「(え、これがリング!?)」


一気に酔いが覚めたような気がした。


「(ロープもないし、『チョチョシビリ』ね!)」


『チョチョシビリ』は、そう、1972年のミュンヘン・オリンピックの柔道の軽重量級の金メダリストである。ソ連の柔道家である。


「(円形リングを用意するなんて、トンミーさんも猪木さんばりの強者ね!)」


そうだ。アントニオ猪木は、1989年4月24日、東京ドームで『チョチョシビリ』と異種格闘技戦を行ったのだ。その時のリングが、ロープなしの円形リングであったのだ。





「(でも、猪木さんは、アナタよ、トンミーさん!私が『チョチョシビリ』よ!)」


アントニオ猪木は、その『チョチョシビリ』との異種格闘技戦で敗北を喫したのだ。異種格闘技戦での初の敗北であった。



(続く)




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