「(ひゃっ!)」
塞がれた口の中で『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、叫び声を上げた。
「(こ…これは!?)」
『逆さクラゲ』の部屋に入ったところで、眼前の円形ベッドから、円形リングで行なわれたアントニオ猪木と柔道の金メダリスト『チョチョシビリ』との異種格闘技戦を想起していた時に、これから『一戦』を交えるはずであったビエール・トンミー氏の口で、自らの口を塞がれていたので、声を上げることはできず、塞がれた口の中でもぐもぐとした。
「(クロー!...でも)」
ビエール・トンミー氏の口で口を塞ぐ『窒息技』に続くまさかの攻撃に驚嘆を隠せない。
「(こんなところにクローなんて聞いたことないわ!)」
マダム・トンミーは、右臀部をビエール・トンミー氏の左手で鷲掴みにされたのだ。
「(トンミーさん、『鉄の爪』フリッツ・フォン・エリックの得意技まで習得なさってたのね)」
『鉄の爪』フリッツ・フォン・エリックは、云うまでもなく、アイアン・クローで有名であった伝説のレスラーだ。
「(でも…このクロー、痛いっていうより…)」
と思ったところであった。
(続く)
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