「(あんなのプロレスではないわ!)」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、全日本プロレス批判を口の中で呟いた。ビエール・トンミー氏と自分とを『最強タッグ』と褒められたが、『最強タッグ』、つまり、『世界最強タッグリーグ戦』を開催するのは、全日本プロレスであり、新日派(新日本プロレス好き)の彼女には、それは賞賛の言葉になっていなかったのだ。
「(でも…トンミーさんとタッグ・チームって、嬉しいわ。ふふ)」
マダム・トンミーに笑顔が戻った。マーケティング部の新システム稼働開始の打上げをしている居酒屋で、マーケティング部の部長から、新システムを開発したシステム開発部のビエール・トンミー氏と共に、新システム稼動の功労者として紹介されたところであった。
「ごめんね、ボクなんかとタッグだなんて」
隣に立つビエール・トンミー氏が、なんだか落ち着きを失っているような様子のマダム・トンミーにそう声を掛けた。
「ええ?そんなことありませんわ。光栄ですわ」
マダム・トンミーは、自分より10cmは背の高いビエール・トンミー氏に上目遣いで答えた。
「(んぐっ!可愛いい!)」
ビエール・トンミー氏は、思わず『反応』した股間を、まだ乾杯前のビールを入れたコップで隠し、動揺を誤魔化すように、言葉を継いだ。
「ああ、そう!良かった!じゃあ、これからもずっとタッグを組んで欲しいな」
(続く)
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