「『原宿の凶器』が開発したシステムを、『原宿のマドンナ』が習得し、今、我々は、新たなマーケティングの武器を手にしたのだ。新システムの稼働は、この2人がタッグを組んだことで実現したんだ。有難う、ご両人!」
と云うと、マーケティング部の部長は、自分の隣に結婚披露宴の新郎新婦さながらに並んだ立つビエール・トンミー氏と『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』とに向け、拍手を送った。そこは、マーケティング部の新システム稼働開始の打上げをしている居酒屋であった。
「よっ、最強タッグ!」
という掛け声もかかったが、マダム・トンミーは、眉を顰めた。
「(違う!『最強タッグ』は、全日だわ。私、全日は好きじゃない!)」
当時の猪木率いる新日本プロレスのプロレスが好きで、全日本プロレスは好きではなかった。『世界最強タッグリーグ戦』を開催するのは、全日本プロレスであった。
「(全日のプロレスは、プロレスじゃないわ。私、見てるわ、技がヒットする瞬間を)」
マダム・トンミーは、全日本プロレスをプロレスと認めていなかったが、時々、テレビで全日本プロレスを見ることはあった。見もしないで批判することはしたくなかったのだ。
「(知ってるのよ、ラリアットなんかの技がヒットする瞬間、技を受ける方は、さっと、少し、ほんの少しだけだけど、体を後ろに引くの。でも、凄く技が効いたフリをするのよ。技をかける方もそれを分った上での技のかけかたをするのよ!)」
マダム・トンミーは、独り憤慨して鼻の穴を膨らませた。
(続く)
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