「(お手合せ願いたいわ!)」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、そう思った。マーケティング部の新システム稼働開始の打上げをしている居酒屋で、彼女のすぐ横に、マーケティング部の部長と共に立つビエール・トンミー氏の股間に目を据えたままであった。
「(凶器攻撃、望むところだわ!)」
プロレス好きのマダム・トンミーは、『原宿の凶器』と呼ばれるビエール・トンミー氏が股間に隠す『凶器』を、栓抜きかボールペン、もしくはメリケンサックといったプロレスラーが使う凶器と思い込んでいた。
「(よし!)」
と、マダム・トンミーは、歯を食いしばり、ビエール・トンミー氏の凶器攻撃を受けて、額から出血しても立ち向かう自身の姿を思い描いていた時であった。
「で、みんな、今回の新システム稼動にあたっては、『原宿の凶器』トンミー君に相応しいタッグ・パートナーがいたんだ」
と、マーケティング部の部長が口にした『タッグ・パートナー』という言葉に、マダム・トンミーは、思わず反応した。
「え?」
と口を開けたマダム・トンミーを部長は指して、言葉を続けた。
「『マーケティング部の華』であり、『原宿のマドンナ』でもある彼女だ!さあ、立って」
と促され、マダム・トンミーは、ビエール・トンミー氏の横に立った。
(続く)
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