「(んぐっ!んぐっ!んぐっ!)」
渋谷は円山町に登る坂道で、満月を見上げ、心の中で咆哮した狼男とも見える30歳台半ばくらいの男、彼の股間もグイっと、満月を見上げているようであった。
「(んん?臭い!)」
男と並んで歩き、男に肩を抱きかかえられるようにしていた20歳台半ばらしき女は、酒に酔い、半開きの虚ろな眼で、臭いのする方に、自分の肩を抱く男の方に顔を向けた。
「(...ああ、獣臭い!)」
獣の臭いとはどんなものか知らなかったが、本能的にその匂いを獣の臭いと捉えた。
「(え?!狼?)」
獣臭い男は、毛むくじゃらで、狼のように見えた。
「(いや、違う…人間のように立っている…狼男?まさか!?)」
自分が酔っているせいだと思った。
「(あ、そうなのね!マスクね。マスクを被ってるのね!)」
狼のマスクを被ったプロレスラーだと思った。
と、マダム・トンミーは、自分の肩を抱く男、狼のマスクを被ったプロレスラーの手を振りほどこうとしたが……
(続く)
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