「(いやー!)」
信じられなかった。『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、信じられなかった。
「(トンミーさん!アナタ、口の中にナメクジを忍ばせていたのね!)」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、ビエール・トンミー氏に『逆さクラゲ』の部屋の回転する円形ベッドに押し倒され、口を口で塞ぐ『窒息技』を掛けられ、回る天井を見ながら、口の中に侵入してきたものをナメクジと理解していた。
「(プロレスにナメクジを持ち込んだのは、アナタが初めてだわ!)」
マダム・トンミーは、口の中に侵入してきたものをナメクジと理解するだけではなく、自分とビエール・トンミー氏が体をぶつけ合っているのを未だプロレスと理解していたのだ。
「うぶっ…」
マダム・トンミーの舌をツンツンしたり、歯茎と頬の内側を、右へ左へと、上へ下へと動き回っていた『ナメクジ』が、マダム・トンミーの舌に本格的な攻撃を仕掛けてきた。コブラツイストを掛けるように、絡みついてきたのだ。
「(く、く、口の中でもコブラツイストなんて!)」
と思いながらも、マダム・トンミーの舌は、抗った。
「(掛けさせないわ!)」
(続く)
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