「え!」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、思わず声を上げた。自分の肩を抱く男、狼のマスクを被ったプロレスラーの手を振りほどこうとした時のことであった。
「さ、行こう!」
狼のマスクを被ったプロレスラーは、より強くマダム・トンミーの肩を抱き、道路の脇の方に身を寄せていったのだ。渋谷の坂道を登った街、そこは円山町であった。
「うっ…」
マダム・トンミーは、眼に飛び込んできた光に、両眼を閉じた。
「大丈夫だから」
男は、マダム・トンミーの肩をより強く抱き寄せ、光の方に歩を進めた。
「(あ!ここは…)」
微かに開けたマダム・トンミー眼が、光の正体を見た。
「(『逆さクラゲ』!)」
そこには、ピンクとオレンジとブルーのネオンサインに包まれた建物があった。
(続く)
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