「(これが….これが、『逆さクラゲ』!?)」
『マダム・トンミーとなる前のマダム・トンミー』は、今、眼の前にある建物が、そこには、『逆さクラゲ』のマークがあった訳ではないものの、会社の同僚のトシ代に教えられた『逆さクラゲ』であることを本能的に悟った。
「(ここで、ベッドの上で『組んず解れつ』するのね!)」
酒に酔って足元のおぼつかない体の中に、闘争心が湧いてきた。
「(トンミーさん、ここで『お局様』と一線を交えたのね!)」
マダム・トンミーは、口を『へ』の字に食いしばった。
「入るよ、いいだろ?」
と、諒解を得る言葉を口にしながらも、ビエール・トンミー氏は、マダム・トンミーの肩を抱きかかえ、有無を云わせず、『逆さクラゲ』の自動ドアの中に連れ込んだ。
「(いいわ!負けないわよ!)」
と思うものの、興奮したせいか、マダム・トンミーは、更に酔いが回り、眼を閉じた。そして、次に眼を開けた時、
「(え?)」
眼の前にピンクが広がっていた。『逆さクラゲ』の中の部屋のようであった。
「うっ!」
思わず、えずいた。猛烈な獣臭であった。
(続く)
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