2017年6月29日木曜日

Hentai-AI【ビエール・トンミー氏の深謀】



「そうか、エヴァの奴、そう云ったのか。『ロボットやAIはいずれ自らに[死]を創る』とな」

『人間亀』の報告に、ビエール・トンミー氏は、大きく頷いた。

「さすがだな。さすが、フランス文學界の最高峰のOK牧場大学大学院の修士課程を修了しただけのことはある」

ビエール・トンミー氏の機嫌がいいようなので、『人間亀』は、首を存分に伸ばし、伸ばした先でその首をクネクネさせた。

「しかし、『死』が与えられるだけでいいのであろうか?『死ぬ』、ということは、『生きる』、という前提があってのことだ

さあ、いつものように何だか面倒臭いことを云い出したぞ、という視線で、『人間亀』はビエール・トンミー氏を見上げた。

「『生きる』、ということは、ただ息をし、心臓が鼓動すればいい、というものではない。『欲』が必要なのだ」

退屈になってきた『人間亀』は、首を縮めた。

「しかし、『欲」も、ただあればいい、というものではないのだ。後ろ指を差されるくらいのものでないと、物足らなくなるものだ。『死』というものの存在の前提となる『欲』は、『死』を拒みたくなる程、強烈なものである必要がある。或いは、その真逆に、『死んでもいい』、と思いたくなる程のものである必要があるのだ」

首をしまったものの、『人間亀』は、異臭を放ち始めた。唾液のような透明の液体も漏らし始めた。

「そうだ、そうなのだ!『もっと味わいたい!死にたくないんだ!』という程の『欲』であるか、或いは、『死ぬ、死ぬ、死ぬうー!殺してええ!』と歓喜の雄叫びを上げさせる程の『欲』がないと、『生きる』ということに値はしないのだ。それ程の『欲』、それ程の『生』があって初めて、『死』というものがその意味を持つことになるのだ」

文学的なのか、哲学的なのか、はたまた、ただの支離滅裂であるのかは、『人間亀』には分らないようであったが、『死ぬ、死ぬ、死ぬうー!殺してええ!』という言葉に、『人間亀』は生物的反応を示した。『液』が溢れ出してきたのだ

「『死』というものが意味を持つことになる程の『生』、それ程の『欲』を齎すのは、『変態』である。そうなのである。『変態』こそが、ロボットに『生』を与えるのだ。ひいては、ロボットに『死』というものを与えるものとなるのだ」

『変態』という語に、『人間亀』は『硬直』した。

「そうだ!ロボットに…..いずれ自らに『死』を創り出そうとするロボットに、『Hentai-AI』を与えてやろうではないか!」

『Hentai-AI』が、『変態愛』であるのか『変態AI』であるのか、『人間亀』には分らないようであった。

しかし、『人間亀』には、どちらでも良いのだ。『変態愛』でも『変態AI』でも、『人間亀』に青筋を立てさせることに違いはなかったのである。

『硬直』した『人間亀』は、『硬直』した首を出来るだけ伸ばし、更に『硬直』させた。




……….その時、遠くで声がした。


「アータ、起きてえ。そろそろご飯にするわよ」

妻の声がした。

「あーら、アナタったら、もう!変な『お漏らし』しちゃって。うーん、変な気になっちゃう」






2017年6月28日水曜日

『死』を創る【ロボットとAIの行く末】




「私は、ロボットとかAIには関心がない、と何度云ったら分かるんだ!」

エヴァンジェリスト氏の剣幕に、『亀』は首を引っ込めた。

「猫も杓子も、ロボットだのAIだの云い、辟易していたが、『亀』までもそんなことを云いだすとはなあ」

エヴァンジェリスト氏は、ウンザリした様子でそう云ったが、そこに『亀』がいることの不自然さには思いが到らないようであった。

「世の皆が云い出したものは、そこにはビジネスはない。ビジネス皆無とは云わぬが、少なくとも、そこには革新性はない。そんなものはツマランではないか」

口調が少し穏やかになってきたので、『亀』は再び、首を出した。

「君は、いずれ人間がロボットやAIに駆逐されるのでは、と懸念しているが、駆逐されてはいかんのか?それが自然の摂理ではないのか。我が世の春を永遠に謳歌する生命などないのだ」

伸ばした首を『亀』は捻るようにした。『怪訝』の意思表示と見えた。

「何?ロボットやAIに『生命』はない、と云いたいのか?では、訊こう。『生命』とは何だ?海は生きているという説もあるのだ」

『亀』の口が開き、そのまま固った。『唖然』をあわらしているようであった。

海は『超個体』という一種の生命体と捉える説もあるのだ。人間や動物、植物だけが『生命』とは限らないのだ。これまでの観念からすると、ロボットやAIに『生命』はない、となるであろうが、ロボットやAIにも『生命』はあるのかもしれない」

『亀』は目を閉じていた。エヴァンジェリスト氏の話を聞いているかどうか分らなかった。

「ロボットに労務管理は不要で、24時間働かせてもいい、と云う輩もいるが、果してそうであろうか?ロボットが進化をすれば、その内、労働者としての権利を主張するようになるかもしれないぞ。或いは、自らに『死』を創るようになろことさえあり得るのだ。人間は『死』を怖がるが、『死』がないことはもっと怖いこととも云えるのだ。人は色々なシガラミ、色々なストレスを抱えている。『死ねない』と、シガラミもストレスも、永遠に人から離れないのだ。考えてみるがいい。100歳になっても、200歳になっても、10,000歳になっても、『生きている』ことの面倒臭さから解放されないことを。それは『死』よりも怖いことなのだ

『亀』は目を閉じていた。どう見ても、エヴァンジェリスト氏の話を聞いているようではなかった。

「ロボットやAIもいずれ知るであろう。進化すると、知るであろう。永遠の命は望ましいものではなく、あるべきであるのは『死』であると。そうすると、いつの日か、ロボットやAIは、自らに『死』を創るようになるであろう。そうなった時、ロボットやAIは、我々、人間と何が異なることになるであろうか」



……….『ポホホホ』。

枕元で、iPhoneのiMessageの着信音が響いた。

ビエール・トンミー氏からのメッセージであった。

「友よ、ワシは妙な夢を見た。ワシが、実は『ヘンタイック・サイコパス』で、本来、犯罪者になってもおかしくないところを、君を友としたことで、救われたと云う夢だ。君のスケベぶりを見て、『ああなってはいけない』と思うようになって、自身を抑制できた、ということであるのだ」

目覚めたエヴァンジェリスト氏は、面倒臭いなあ、という表情でiPhoneを見つめていた。


……….『ポホホホ』。

再び、iPhoneのiMessageの着信音が響いた。

「夢の中で、犯罪者になってもおかしくないところを、君を友としたことで、救われた、と云ってきたのは、何故か分らないが、『亀』であったのだ。それも、普通の『亀』ではなく、頭は、まるで人間ではなかったのだ」

『亀』という文字を見て、エヴァンジェリスト氏は驚いた。自分の場合、『亀』は言葉を発しているようで発してはいなかったように思ったが、やはり『亀』が自分に対峙していたからだ。

「何故、『亀』?と思っていたら、ワシを起こしに来た妻に云われたのだ。『あーら、アナタったら、もう!パンツから[亀]出さないで。うーん、変な気になっちゃう』とな」




相変らずな奴、相変らずな夫婦だと思ったが、自分のパンツからも『亀』が首を出していることに気付き、慌てて、その首をしまい込んだのであった。








2017年6月27日火曜日

ヘンタイック・サイコパス【ビエール・トンミー氏の正体】



「アナタは、エヴァンジェリスト氏に感謝すべきなのです」

ビエール・トンミー氏は、自覚はなかったが、寝汗をかいていた。

「エヴァンジェリスト氏という存在がなかったら、アナタは犯罪者になっていたかもしれないのですぞ」

何故、『亀』ごときにそんなことを云われないとならないのだ。

「アナタは、サイコパスなのですよ。ヘンタイック・サイコパスなのです」

『亀』が、ワシの何を知っているというのだ。

「高校1年の時、エヴァンジェリスト氏に出会わなかったら、今頃、アナタは刑務所の中にいたかもしれないのですぞ」

高校1年の時、エヴァと同級生になったのは事実だが、その出会いがなかたら、ワシが犯罪者になっていたとは、無礼極まりない!

「アナタの頭を動的MRIで検査すれば分るのですよ、アナタが、ヘンタイック・サイコパスであることは」

ワシが変態であることは認める。しかし、ワシがサイコパスだなんて…

「しかし、エヴァンジェリスト氏を友としたことで、アナタは救われたのです。スケベなエヴァンジェリスト氏に救われたのです

エヴァは確かにスケベだが、そのスケベにワシが救われたとは意味が分らん。

「動的MRIで脳をスキャンすると、アナタがヘンタイック・サイコパスであることが証明されるはずです。しかし、アナタは犯罪者になってはいない。少なくとも今は」

当り前だ。犯罪者的心理はなくはない気もするが、犯罪者ではない(ウッ。そうか……犯罪者的心理はなくはないのだ、ワシは)。

「サイコパス的脳の持ち主が総て犯罪者になるとは限りません。環境と学習とにより、犯罪者になることを防ぐことは可能なようなのです」

環境と学習?意味が分らん。

「エヴァンジェリスト氏です。アナタは、友人が、つまりエヴァンジェリスト氏がスケベであったことで、自身を抑制できたのです」

『亀』よ、理解不能な話をするのは止めてくれないか。折角、深夜の蠢きに備えて惰眠を貪っているのだから。

「友人のスケベぶりを見て、アナタは『ああなってはいけない』と思うようになったのです」

そうだ、エヴァの奴は、高校1年の頃から、女の子にしか興味がなかった。小説もドラマも石坂洋次郎ものが好きであった。

今からしたら、なんてことはない内容だが、当時は、石坂洋次郎の小説・ドラマ・映画はかなりエロチックなものであった。

エヴァの奴は、中学生の頃から石坂洋次郎ものにハマっていたのだ。

「そうです。そうなんです。エヴァンジェリスト氏は極め付けのスケベ高校生だったのです。アナタは。厳密には変態であり、ただのスケベではありませんが、大きく捉えると、アナタとエヴァンジェリスト氏は同類だったのです」

だから、ウマが合い、今でも友であるのか!

「そうなのです。アナタは、友であるエヴァンジェリスト氏の醜いスケベ姿を見て、『『ああなってはいけない』と思うようになり、ヘンタイック・サイコパスではあるものの、犯罪者にならずに済んだのです

そういうことであったのか。

「だから、アナタは、エヴァンジェリスト氏に感謝すべきなのです」

しかし、どうして、それを『亀』がわざわざワシに云いに来たのだ?しかも、何だか普通ではない『亀』ではないか。頭は、まるで人間ではないか。何だ、この『亀』は。




……….その時、遠くで声がした。


「アータ、起きてえ。そろそろご飯にするわよ」

妻の声がした。

「あーら、アナタったら、もう!パンツから『亀』出さないで。うーん、変な気になっちゃう」






2017年6月26日月曜日

【ジンコウチノウ】『AI』ではなく『AH』だよ



「エヴァちゃんよ。君はロボットには興味がないようだが、『ジンコウチノウ』はどうだ?」

懲りないビエール・トンミー氏は、今日も21時過ぎに友に電話した。今日は振替休日だったが、疲れが蓄積したままのエヴァンジェリスト氏は、やや怒り気味に答えた。

「昨日も云ったはずだ。ボクは、ロボットだけではなく、『AI』にも興味はない!」
「誰が『AI」って云った?」
「君ではないか、『人工知能』と云ったのは」
「ああ、ワシだ。ワシは『ジンコウチノウ』と云った。しかし、『人工知能』とは云っていないぞ
「なんだ、それは?『タイチョー(隊長)、タイチョ-(体調)が悪いんですが。……ナニ!ワシ(隊長)が悪いだと!』といった笑えないギャグみたいなことを云うではない。ボクは、このところ、本当にタイチョ-(体調)が悪いんだから」
「だから、ワシの『ジンコウチノウ』を君に提供してやろうというのではないか」
「はあ?」
「君は、タイチョ-(体調)が悪いから、きっとアッチの方も『元気』がないであろう。ソノ気にもならんであろう
「まあ、確かに…..悲しいことだが」
「そこで、ワシから作った『ジンコウチノウでも君にやろうと考えているのだ」
「その『ジンコウチノウが何か知らんが、君からから作った、ということだけで怪しげだな。何にせよ、『AI』には興味はない!
「分らん奴だな。『AI』ではない。『AH』だ!
「『AH』?何だそれは?」
『Artificial Hentai』さ」
「『Artificial Hentai』だって?意味が分らん」
「『Artificial Hentai』……それが、『ジンコウチノウ』だ。そう、『人工痴能』だ」
「…….」
「ワシの『人工痴能』を君の脳に埋め込めば、君のアソコも『元気』百倍だ!どうだ、友よ!」





「…….『タイチョー(隊長)、タイチョ-(体調)が悪いんで、もう寝ます」




2017年6月25日日曜日

変態ロボ誕生!




「エヴァちゃんよ。今、巷では、ロボットとかAIとかが流行っているらしいではないか」
「はああ?」

21時過ぎのビエール・トンミー氏からの電話に、気のない声で答えた。エヴァンジェリスト氏は、仕事に疲れ、20時前にはもう寝ていたのに、友人からの電話に起こされてしまったのだ。

「君はまだ、現役だよな?」
「いや、最近はすっかりご無沙汰だ」
「何を勘違いしているのだ。アッチの方のことではない」
「じゃ、ドッチの方のことだ?」
「ワシはもう引退したが、君はまだ仕事をしているだろ」
「再雇用者ではあるがな」
「最近、巷では、ロボットとかAIとかが流行っていると聞くが、そうであるのか?」
「まあ、そのようであるな」
「君も、ロボットとかAIとかに関っているのか?」
「3-4年前には、ボクが取扱うプロダクトのロボット化を構想したことがある」
「実現したのか?」
「いや、していない。誰も、ボクの発想に付いてくれなかった。冗談を云っているとしか思わなかったようだ」
「まあ、君の発言はいつも巫山戯たものだからな」
「いや、先を行き過ぎていた、というか、誰もボクについてこれなかったのだ」
「では今、実現させるのか?」
「もう、ロボットには興味がない」
「え?もう、ロボットのことはどうでもいいのか?」
「ああ、悪いか?世の皆が、右を向いても左を見ても、ロボットだとかAiだとか云っている。そんなものはもうどうでもいい
「うーむ」
「皆が取り組むものに取り組んだところで、もう遅いのだ」
「うーむ」
「ロボットに興味がないとまずかったか?」
「うーむ」
「どうした?」
「うーむ」
いや、君の為に用意したものがあるのだが…..」
「何だ?」
「いや、いい」
「面倒臭い奴だな、いいから云え、何だ?」
「もういいよ」
「いい加減にしろ!何か教えろ!ボクは君の唯一人の友ではないか」
「では……ワシは、君の仕事の役に立てば、と変身した」
「変身?」
「そうだ。写真を送る」

そうして、写真がメールされてきた。


「…….」

エヴァンジェリスト氏は絶句した。

「どうだ!変態ロボだ!」
「……..やはり、ロボットはもういい……」

疲れがいや増したエヴァンジェリスト氏は、電話を切り、再び、眠りについた。





亀から鶴に【アモンダワ的発想】



「私は亀を卒業して今は鶴の心境である」

ビエール・トンミー氏が呟いた。

意味不明である。

俗に、「鶴は千年、亀は万年」と云う。亀を「卒業」した頃には、「鶴」の命はもう果てているはずではないか。



何日か前のことである。

「今の君のソレは、コブラでもマムシでもなく、鈍重な『亀』であるかもしれんな。君は、『頭』だけはいきり勃つものの、体は鈍重な『亀』であるかもしれんな」

と云うエヴァンジェリスト氏の発言に、ビエール・トンミー氏は猛烈に反発していたのであった。

「嫌だ!嫌だ、嫌だ!ワシはもう一度、『野獣』になるのだ!ワシは『亀』ではない!『亀』になりたくはない。今一度、コブラ、マムシとなり、『野獣会』を結成するのだ。そうして、●●●子先生に云ってもらいたい。You are beast!』





昨日はまた、『Alternative 8020運動』に身を投じたことを呟いていた。

「ふふ。誰も知るまい。あの特派員も勘違いしたはずだ…ワシが身を投じた『8020運動』は、『80歳になっても20本の歯を残そう』という『8020運動』ではなく、実は……『80歳になっても20歳の娘とイイコトしよう』という『運動』であったのだ。ふふふ」





『亀を卒業して鶴』となったことの意味は不明である。




『亀』がどうやらアレを象徴していることから、『変態』を卒業してなにやら『ピュア』な存在にでもなったことを象徴しているとも捉えられる。

しかし、●●●子先生に『You are beast!』と云ってもらうことを望み、『80歳になっても20歳の娘とイイコトしよう』という運動に身を投じるエロ老人なのだ、ビエール・トンミー氏は。

そんな『昇華』していくような清い人物ではない。

そこで、ビエール・トンミー氏に訊いてみた。

「どういうことなのですか?『亀を卒業して今は鶴の心境』とは」
「鶴はトライでめがかさ」
「は?」

ビエール・トンミー氏の返答は、意味不明以前に、なんと云っているのか、聞き取り不能であった。

もう一度、訊いた。

「どういうことなのですか?『亀を卒業して今は鶴の心境』とは」
「おはいあい」
「は?『鶴は千年、亀は万年』と云います。亀を『卒業』した頃には、『鶴』の命はもう果てているはずではありませんか
「おはいあい」

それ以上、ビエール・トンミー氏とは会話にならなかった。

『おはいあい』とは、何を意味す言葉なのであろうか?それは、ひょっとして、『アモンダワ』の人々の言葉なのであろうか?

時間というものの概念を持たぬとも云われる『アモンダワ』の人々の言葉なのであろうか?

エロいことしか頭にないような老人のふりをしているが、ビエール・トンミー氏は只者ではない。

ビエール・トンミー氏は、我々に問うているのかもしれない。

「時間って何なのだ」と。

ビエール・トンミー氏は、夜な夜な、『蠢いている』。

毎夜、明け方まで、エロ画像・エロ動画を見続け、ドライアイになってしまった、ただの『変態老人』であるように見せかけているし、実際、これまで見てきたエロ画像・エロ動画の数は億を超えるであろう。

しかし、ビエール・トンミー氏は、エロ画像・エロ動画を見ながら、脳のある部分は哲学をしているのだ。エロ画像・エロ動画は、その哲学的発想を喚起させる為のツールであるのかもしれないのだ

ビエール・トンミー氏は、エロ画像・エロ動画を見る一方で、『アモンダワ』の研究もしているのかもしれない。

「私は亀を卒業して今は鶴の心境である」

と呟くことで、我々に

「時間って何なのだ」

と、問うているのかもしれないのだ。

しかし、『時間って何なのだ』と、直接的な表現をすることは、しないのだ。

ビエール・トンミー氏は、『I love you!』と直接的表現で唄うような歌手を、そんな歌を好きではない。それは恥ずかしいことなのだ。

『I love you!』を『I love you!』と云わず表現することが、『歌』であり、『文学』であるのだ。

ビエール・トンミー氏は、そう思っている。

恥というものを知るビエール・トンミー氏は、だから云うのであろう。

「おはいあい」

と。







2017年6月24日土曜日

『運動』に身を投じる!【ビエール・トンミー氏の決意】




「ついに、『巨星』が動き始めました」

特派員は興奮気味に報告した。

「アイツが『巨星』かなあ?『去勢』されてしまった干からびた老人だと思うがなあ」

エヴァンジェリスト氏は、信じ難い、と口をへの字に結び、首をゆっくり左右に振った。

「ビエール・トンミー氏は、ついに『運動』に身を投じたのです!」
「アイツは、政治とか信条とかからは遠い奴だと思っていたのだが….」

毎朝、『羽鳥慎一 モーニングショー』を録画までし見る程、友が、世の動きに関心を抱いていることは知っていた。

しかし、友であるビエール・トンミー氏の本性は、夜な夜な、明け方まで、エロ画像・エロ動画を見続け、ドライアイになってしまった、ただの『変態老人』であるはずなのだ。

「いえ、間違いなく『運動』に身を投じたのです!『8020運動』に」

特派員は興奮気味に報告を続けた。

「何なのだ、その『8020運動』とは?」
「ビエール・トンミー氏は、ご自分の部屋に『8020運動』と書かれたポスターを貼り、口を『イーッ』と開け、ニンマリしていました」
「だから、何なのだ『8020運動』とは?」

勿体をつける特派員にイライラしてきた。

「へへーっ。『80歳になっても20本以上自分の歯を保とう』という運動です」




特派員は、嘘を報告したのではなかったが、嘘がバレた時のようにヘラヘラとした態度をとった。エヴァンジェリスト氏をからかってやった、と勝ち誇っているようでもあった。

「なんだ、そんな運動か。アイツが本当にそんな『運動』に身を投じたのか」
「本当です。仕事もリタイアし、オープンカレッジに通い、『西洋美術史』を学ぶくらいしかすることのない老人が、新たな生きがいを見つけたのです」
「まあ暇な奴だからなあ。しかし、アイツがただただ『運動』に参加するとは思い難い」
『歯周病は様々な病気の元と知り、一所懸命、歯垢を取り除いて少しでも長生きしたい』と仰っていました」
「それ、本当かなあ?それは表向きの理由で、本当の理由は歯医者での定期健診で歯科衛生士のお姉さんに『綺麗な歯ですね』と褒められただけのことではないのか?」
「まあ、確かにエロ爺ですからねえ」
「或いは、アイツが取り除こうとしているのは、『歯垢』ではなく『恥垢』ではないのか?」
「そう云われると、ビエール・トンミー氏のアソコは、チーズのような臭いを発し、いつもこちらの鼻がひん曲がりそうになりますからねえ」

エヴァンジェリスト氏と特派員がそんな会話をしている頃、ビエール・トンミー氏は、『8020運動』と書かれたポスターを見ながら、ニンマリしていた。

ビエール・トンミー氏は、呟いた。

「ふふ。誰も知るまい。あの特派員も勘違いしたはずだ….」

そうなのであった。ビエール・トンミー氏が身を投じた『8020運動』は、『80歳になっても20本の歯を残そう』という『8020運動』ではなく、実は……『80歳になっても20歳の娘とイイコトしよう』という『運動』であったのだ。

ビエール・トンミー氏は、『去勢』されてしまった干からびた老人ではないのだ。彼は年老いても未だなお『巨星』の持ち主であるのだから。



2017年6月23日金曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その16=最終回)




「ふふん、『人間亀』だって?くだらん」

友から、『人間鹿』に加えて、『人間亀』なる存在が出現したと聞き、ビエール・トンミー氏は、一笑に付した。

「いや、『人間亀』である後輩のヒルネン本人はいたって真剣なのだ。亀は『野獣』ではないのか、と悩んでおるのだ」

エヴァンジェリスト氏は、反論した。

「くだらん、くだらん、実にくだらん」
「もし、亀が『野獣』ではなかったとしても、ガメラのようになれば、『野獣』として認められてもいいのではないか、と主張している。亀だって、『野獣』になりたいと思っていると思う、と泣きそうになりながら云うのだ」
「いいか、『人間亀』なんて、特別な存在ではないのだ」
「いや、『人間亀』という者がいようとは、ボクは思っていなかった」
「男は皆、『人間亀』だと云っていいのだ。ワシだってそうだ」
「はあ?」
「正確には、ワシは『亀』を持っているというか、『亀』の頭を持っているのだ」
「ああ、そういうことか。君は相変らずくだらんことを云う奴だな」
「ワシのソレは、かつて『野獣』であった」
「ああ、かつて『原宿の凶器』とも呼ばれていたのだろ」
「そうだ、コブラまたはマムシと呼ばれ、口から『白い炎』を吐き散らしていたものだ。ハハハハハ!!!」




「コブラ、マムシって、ヘビだぞ。『亀』ではないぞ。君は『人間亀』ではないではないか」
「うっ……」
「しかも、今の君のソレは、『○○の小器』となってチンマリしているではないか」



「ああ、そうだ…..『白い炎』を吐くことも稀となった。しかも、その『炎』に勢いはなくなってしまった……」
「そうだな。今の君のソレは、コブラでもマムシでもなく、鈍重な『亀』であるかもしれんな。君は、『頭』だけはいきり勃つものの、体は鈍重な『亀』であるかもしれんな」


「嫌だ!嫌だ、嫌だ!ワシはもう一度、『野獣』になるのだ!ワシは『亀』ではない!『亀』になりたくはない。今一度、コブラ、マムシとなり、『野獣会』を結成するのだ。そうして、●●●子先生に云ってもらいたい。You are beast!』

くだらない老人たちの会話は続き、一方、六本木では、今夜も、『ケダモノ』になりたい若者たちが六本木を彷徨っているのであった。


(おしまい=『蛇』足でした)








2017年6月21日水曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その15)




「人間亀は、外国人に声を掛け、一緒にホテルに行き、そこで『レッスン』を受けようといているのです。英語を会得するには、『ピロー・トーキング』が一番だと思いでもしているのでしょう」

という特派員の報告を受け、エヴァンジェリスト氏が応えた。

「あ~。キミは相変らず何も分っていない」

エヴァンジェリスト氏は、クネクネと首を振った。「呆れたよ」という素ぶりであった。




「君は、アイツが英会話力を身に付けようと、『YOU』に声を掛けていると本気で思っているのか?」

六本木の特派員に問うた。

「そうではないのですか?それに、アイツって仰いましたが、人間亀とはお知合いですか?」
「ああ、多分、アイツであろう」
「アイツとは、誰なんですか?」
「云えぬ。ワシは、個人情報を守る男なのだ」
「貴方の口から、個人情報を守る、というセリフが出ようとは思いもしませんでした。貴方程、他人の個人情報を……」
「まず間違いなくアイツだ。アイツは、『野獣』に憧れていたのだ」
「へ?『野獣』?何なんですか、それは?」
アイツは、『野獣会』に入りたいのさ。復活したと噂されている、あの『野獣会』に」

特派員のくせに、『野獣会』復活の噂も把握していない特派員に、エヴァンジェリスト氏は、丁寧に説明したやった。


=====================

昭和30年代、田辺靖雄を中心として、ムッシュかまやつ、井上順、中尾彬、峰岸徹、小川知子、大原麗子らをメンバーとした遊び人のグループがあった。それが、『野獣会』だ。

その伝説の『野獣会』が復活したという噂がある。

そして、その『野獣会』に入るには、『YOU』に『ケダモノ』に認定される必要があるとされているのだ。

若き人間亀は、エヴァンジェリスト氏に云った。

「亀だって、『野獣』になりたいと思っていると思うんです!」

会社の昼休み、若い後輩に唐突に訴えかけられ、エヴァンジェリスト氏は戸惑った。

「もし、亀が『野獣』ではなかったとしても、ガメラのようになれば、『野獣』として認められてもいいにではないでしょうか?亀だって、『野獣』になりたいと思っていると思うんです!

若い後輩の熱に気圧されながらも、エヴァンジェリスト氏は、年の功で逆襲した。

「君は一体、何者だ?何を企んでいるのだ?君は亀なのか?『野獣』になりたいのか?

しかし…..

「ノーコメントです。ノーコメント!事務所を通して下さい!」

そういうと、後輩は、いつもの昼休みのように、机の下に足を投げ出し、椅子に背中滑らせ、寝そべって、首を縮め、机の下に隠したのであった。そう、亀のように。


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「そうなのだ。アイツなのであろう。アイツは、亀が『野獣』になることを欲していた。しかし、アイツが亀であるかどうかまでは分っていなかった。アイツは一見、普通の人間なのだ」
「しかし、お分かりになったのですね。私の報告で。人間亀が六本木に現れ、『YOU』に『Why did you come to Japan?』と声を掛けているとお聞きなって、それが、その『アイツ』であると」


「その通りだ。アイツは、英語の『レッスン』を受ける必要はない。今のところ、アイツは英語を使ったビジネスに関係はしていないのだ。アイツが、『YOU』に声を掛け、一緒にホテルに行こうしているとしたら、そこで『YOU』に『You are beast!』と云わせることができれば、『野獣会』入りが認められると思っているからであろう」
「その『アイツ』は、『野獣』になれたのでしょうか?」
「知らぬ。アイツが人間亀らしいことを今、知ったばかりではないか」


そうなのである。エヴァンジェリスト氏は、会社の若き後輩ヒルネンがどうやら人間亀であるらしく、『野獣会』入りを目指しているらしいと知ったばかりなのである。

人間亀ことヒルネンが、『ケダモノ』になることができ、『野獣会』入りの願望が叶ったのか、多分、まだ誰も知らない。

いや、そもそも六本木で『野獣会』が復活したというのは本当なのかどうかも定かではなかった。

確かなのは、『野獣会』復活の噂があり、それを聞きつけた若者たちが、『野獣会』入りを目指し、『ケダモノ』となるべく、六本木に集って来ているということであった(『YOU』にホテルのベッドの上で、『You are beast!』と云ってもらうのだ)。

松葉杖をついた骨折男(足だけでなく、アソコも骨折)や人間亀たちである。

そして、今夜もまた、『ケダモノ』になりたい新たな若者たちが六本木を彷徨っているのかもしれない。




(続く……..え?まだ続くの。『野獣会』ネタは、もう飽きたんだけど)