「『有紀』さん…….ううーっ!」
深夜の自宅の居間、ビエール・トンミー氏は、テレビを前に、小声で唸っている。
「亡霊でいいから、出てきてくれえ!」
テレビに映っているのは、NHKの朝ドラ『まんぷく』である。HDレコーダーに録画したものを見ているのだ。
「松坂慶子はもういい!」
その日(いや、もう前日か)の『まんぷく』は、NHKのBSプレミアで朝7:30から見た後、NHK総合で8:00から、また見た。更に、NHK総合で12:45からも見た。最後は、NHKのBSプレミアで23:30から見た。
しかし、録画したものをまた見るのだ。
「(『咲姉』(内田有紀)が早々に死んだ時は、どうなるのかと思った。NHKにクレームのメールを入れようかとさえ思った)」
『まんぷく』は、ヒロイン『福子』の姉である『咲』を『内田有紀』が演じると聞いて見るようになったのであった。
しかし、NHKは、放送開始して程なくして、『咲姉』を結核で殺してしまったのだ。
とはいえ、いけないことかもしれないが、病に伏す『咲姉』は、それはそれでとても魅力的に思えた。体のある部分が疼いた程である。
「『咲姉』…….ううーっ!」
その疼きも『咲姉』の死と共に消え去ることになると思っていたが、NHKは、粋なことをしてくれるようになった。
死んだ『咲姉』が出てくるのである。
まあ、幽霊であるが、極めてリアルである。主に、母親の『鈴』の許に現れる(妹の福ちゃんのところに現れたこともあるが)。
幽霊の『咲姉』は、母親の『鈴』の心の声の反映のようだ。だから、少々迷走的な言葉を発する。
でも、そんなことはどうでもいいのだ。
「(ああ、『咲姉』!.......どんな『咲姉』でもいい!『咲姉』が出てくれさえすれば….)ううーっ!」
(続く)
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