2018年11月26日月曜日

【ビエールのオトナ社会科見学】ホイコーローを作る[その37]







「今度は、アタクシ!?」

『松坂慶子』、いや『松坂慶子』に酷似した女性の視線は、そう云っていた。少なくともビエール・トンミー氏には、そう聞こえた。

視線が口をきく、というのも妙であるが、ビエール・トンミー氏の聴覚はそう捉えたのだから仕方がない。

「(ええーっ!いやいやいやあああ….それはあ….)」
「ホント、変態ねえ。ま、分らなくはないけど。昔は、殿方はアタクシの網タイツにメロメロになったものだものお」


「(んぐっ!)」

ビエール・トンミー氏は、思わず、唾を飲み込んだ。

「(しまった!想像してしまった!)」
「んまあ!」
「(ち、ち、違うー!)」
「アタクシ、見たのよ!貴方の喉ちん…..まあ!何を云わせるの!」
「(いやいや、唾を飲み込んだのは….そう、この後のホイコーローが….)」
「まあ、みっともない!源氏の男は言い訳なんてしないわ!」
「(え?ゲンジ?....ボクは….)」
「いいの、仕方ないわねえ。殿方って、抑えようと思っても反応しちゃうのよねえ」

それまでは、『武家の女よ』とキリッとした表情しか見せなかった『松坂慶子』に酷似した女性の顔は、柔和というか、むしろこちらに媚びるようなものとなっていた。

「(綺麗だ…..)」

と思ったものの、ビエール・トンミー氏は、頭を振った。

その時、…….

「(…..?)」

ビエール・トンミー氏はまたまたまた、何かに射抜かれているのを感じた。


(続く)


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