「今度は、アタクシ!?」
『松坂慶子』、いや『松坂慶子』に酷似した女性の視線は、そう云っていた。少なくともビエール・トンミー氏には、そう聞こえた。
視線が口をきく、というのも妙であるが、ビエール・トンミー氏の聴覚はそう捉えたのだから仕方がない。
「(ええーっ!いやいやいやあああ….それはあ….)」
「ホント、変態ねえ。ま、分らなくはないけど。昔は、殿方はアタクシの網タイツにメロメロになったものだものお」
「(んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏は、思わず、唾を飲み込んだ。
「(しまった!想像してしまった!)」
「んまあ!」
「(ち、ち、違うー!)」
「アタクシ、見たのよ!貴方の喉ちん…..まあ!何を云わせるの!」
「(いやいや、唾を飲み込んだのは….そう、この後のホイコーローが….)」
「まあ、みっともない!源氏の男は言い訳なんてしないわ!」
「(え?ゲンジ?....ボクは….)」
「いいの、仕方ないわねえ。殿方って、抑えようと思っても反応しちゃうのよねえ」
それまでは、『武家の女よ』とキリッとした表情しか見せなかった『松坂慶子』に酷似した女性の顔は、柔和というか、むしろこちらに媚びるようなものとなっていた。
「(綺麗だ…..)」
と思ったものの、ビエール・トンミー氏は、頭を振った。
その時、…….
「(…..?)」
ビエール・トンミー氏はまたまたまた、何かに射抜かれているのを感じた。
(続く)
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