「(いや、オジサンは、…んん、ボクは、子どもに興味はない)」
『ユキ』と呼ばれた少女は、自分に顔を向けている訳でもないのに、そして、他の誰も自分に顔を向けている訳でもないのに、ビエール・トンミー氏は、必死の弁明を試みた。
「(ああ、さっきは向こうを見てたものね)」
『ユキ』と呼ばれた少女は、母親と向き合って何かを云っているようであるのに、何故、彼女の別の声が聞こえるのかは分らなかった。
「(え!?君も見ていたのか?)」
「網タイツが好きなの?」
「(ええーっ!聞こえていたのか!)」
「好きなのね?」
「(いや、まあ…..嫌いでは……)」
「ママも持ってるよ、網タイツ」
「(ウオーッ!......あ!)」
「ふん!スケベ!」
ビエール・トンミー氏は、慌てて、「Cook Do®️」の赤いエプロンの下部を抑えた。
「アータ!」
「は!」
「どうしたの?」
妻であった。マダム・トンミーが、夫の肩を叩いたのだ。
「始まるわ。席に着きましょ」
(続く)
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