味の素の工場見学には、『味の素うま味体験館』前からバスに乗る。
『アジパンダバス』だ。
『味の素うま味体験館』の玄関を出る時、ビエール・トンミー氏は、まだ茫然としていた。
『シアター』では、うまみと共にあった日本人の食の歩みを見たはずであったが、ビエール・トンミー氏の脳内では、10代、20代、30代、そして、40代の『内田有紀』の映像が流れていたのだ。
それは、『内田有紀』の、いや、『内田有紀』に酷似した女性の娘で『ユキ』と呼ばれた少女が、ビエール・トンミー氏の股間に視線を落とし、
「ニッ!」
と意地悪な笑みを浮かべたことが切っ掛けとなっていた。
『シアター』を出ても、まだ『内田有紀』の映像が、ビエール・トンミー氏の脳内を巡っていた。
「アータ、どっちに行くの?こっちよ」
妻の言葉にようやく我に返った。どうやら、『アジパンダバス』の乗り口とは反対方向に向かっていたようだ。
「あ、ああ…」
ようやく目に入った『アジパンダバス』は、文字通り、『アジパンダ』のバスであった。側面には、『AjiPanda®️』と『AjiPanna®️』が描かれていた。『AjiPanna®️』は、どうやら『AjiPanda®️』の妹らしい。
「ニッ!」
その時、バスの乗車席の窓から何かが光った!
ビエール・トンミー氏は、立ち眩みがし、思わず、腰を落としそうになった。
「アータ!」
マダム・トンミーが夫を支えた。
「あ…いや…」
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
その様子を、バスの中から、『ユキ』と呼ばれた少女が、不敵とも取れる笑みを浮かべ、見ていた。
(続く)
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