「(ああ、ボクは妻を愛している)」
ピンクの足跡を辿りながら、手を繋いで(愛し合っているからだ)、トンミー夫妻は、目的地まで来た。
『味の素うま味体験館』である。
マダム・トンミーは、『味の素うま味体験館』横にある『味の素グループうま味体験館』とある案内板の前に夫を立たせ、iPhoneで写真を撮った。
「(素敵だわ。64歳になったなんて思えない。ピンとした姿勢!)」
「(ああ、妻は若い!ボクより10歳下だから若いのは当り前だが、どう見ても40歳台だ)」
写真を撮る妻、写真を撮られる夫が、図らずも互いの心中で同じような思いを抱いた。
しかし…..
「(あ!)」
夫は、思わず出しそうな声を喉元で止めた。妻は、撮ったばかりの夫の写真をiPhoneの画面で確認していた。
「(……..!)」
夫婦の間を何かが通ったのだ。
「(まさか……)」
夫の目は、『何か』を追った。
「ママあ。この足跡って、パンダなんでしょ?」
中学生くらいに見える女の子の声であった。
(続く)
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