「いやね、エヴァの奴が云ったのさ」
『大師線』の『港町駅』を出た電車の中で、ビエール・トンミー氏は、妻に解説をしていた。
「『ミニテル・ローズ』さ」
「『ミニテル』?」
「フランスの情報通信サービスさ」
『ミニテル』は、正確にはサービスの名称ではない。そのサービスの名称は、『テレテル』であり、『テレテル』の専用端末名が『ミニテル』であるが、通常、『ミニテル』はサービス名としても使われる。
「フランスの?」
「うーん、ボクもよくは知らないけど、今のインターネットみたいなサービスだったらしい。30年か40年も前に始まったそうだ」
「ええ?そんな時代にインターネット?」
「いや、インターネットではなく、インターネットみたいなサービスだそうだ。電子電話帳のサービスから始めて、飛行機や列車の予約やオンライン・ショッピングもできたし、メールもできたそうだ」
「ふううん」
「フランスの家庭にはどこも『ミニテル』の端末があって、お年寄りでも子どもでも簡単に使えたそうだ」
「だったら、インターネットよりいいんじゃない?だって、インターネットって、本当に誰でも使えるってことないもの。アタシだって、よく分かんないことあるもの。まあ、アータが、手取り足取り、アソコも取りで教えてくれるけど。ふふ」
マダム・トンミーは、自らの言葉に頬を染めた。
「日本で『ミニテル』を普及する計画もあったんだ」
「へええ、そうなの?」
「ボクとエヴァの共通の友人の『ムッシュウ・ミニテル・オ・ジャポン』が30年くらい前に『日本語ミニテル協会』って組織を作ったんだ」
「キョーカイ?」
「ああ、日本での『ミニテル』の事業化のFeasibility Studyをする為の組織さ」
「フィ、フィ、フィージ….?」
「その『ミニテル』にね、『ミニテル・ローズ』ってあったんだって」
(続く)
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