「おお、そうだ。『コロムビア』と云えば、『コロムビア・ローズ』だ」
マダム・トンミーは目も虚ろになっていたが、ビエール・トンミー氏は、構わず解説を続けた。
「ああ、『コロムビア・ローズ』ね」
「え?『コロムビア・ローズ』知ってるの?」
欠伸をしていた妻が反応したのに驚いた。
「ええ、何年か前に、『爆報!THE フライデー』に出てたわ。昔の歌手でしょ。80歳なのに、歌謡教室までクルマを自分で運転してたわ。運転上手なの」
ビエール・トンミー氏は、『爆報!THE フライデー』が何か知らなかった。『爆報!THE フライデー』は、申すまでもないとは思うが、爆笑問題が司会をするバラエティー番組だ。かつての有名芸能人の『今』をよく取り上げている。
「でも、どうして『ローズ』なのかしら?『コロムビア』は、日本コロムビアの歌手だったからでしょうけど。ああ、そうだ、『ジプシー・ローズ』ね」
「え!?『ジプシー・ローズ』知ってるの?」
『ジプシー・ローズ』は、戦後の『ストリップの女王』だ。ビエール・トンミー氏も、自身が生まれた頃の有名人なので、名前くらいしか知らない。
その『ジプシー・ローズ』を妻が知っていることに驚いた。
「棟方志功の『アメノウズメノミコト』って、『ジプシー・ローズ』をモデルにしたのよ」
ああ、そうなのか。妻は、美術に造形が深い。棟方志功から『ジプシー・ローズ』を知ったのか。
「でも、『ローズ』って言葉、やっぱりなんだか卑猥な感じよね」
「ああ、そう云えば、エヴァの奴が云ってたな.....」
ビエール・トンミー氏とマダム・トンミーの乗る『大師線』の電車は、『港町駅』を出た。
(続く)
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