2018年11月27日火曜日

【ビエールのオトナ社会科見学】ホイコーローを作る[その38]







「そう、熟女がお好きなのね」

その視線は、そう云っていた。少なくともビエール・トンミー氏には、そう聞こえた。

視線が口をきく、というのも妙であるが、ビエール・トンミー氏の聴覚はそう捉えたのだから仕方がない。

「(ん?…誰だ?)」
「まあ、私だって、今月[2018年11月]で43歳になった熟女だけど….」



「(え?今月で43歳?...まさか….)」
「でも、60台の方がいいのね…..」
「(いや、ボクは若い方が…….)」
「え?そうなの?....じゃ、噂通り、ロリコン?」
「(ま、ま、まさかあ!)」
「やっぱり、『ユキ』に眼をつけてたの?」
「(いえ、違います!.....は?....『ユキ』?.....って、ことは….)」

ビエール・トンミー氏は、反対側の反対側の横を向いた。つまり、『ユキ』と呼ばれた少女がいた方の側を向いたのだ。

「(『有紀』さん…..)」

そこにいたのは、『内田有紀』、いや『内田有紀』に酷似した女性であったが、こちらを向いてはいなかった。

「ママあ、可愛いい?」
「うん、可愛いいよ。『ユキ』は、赤が似合うわねえ」

『内田有紀』に酷似した女性が、娘に「Cook Do®️」の赤いエプロンと、赤い『AjiPanda®️』のバンダナをつけてやっていた。

「でもね、パパが、『ユキ』は可愛いいから、男には気をつけろ、ですって。特に、オジサンには、って」

と云うと、一瞬、ほんの一瞬だが、こちらを見た。見たような気がした。

「(んぐっ!)」
「ふん、ロリコン!」

もう視線は剥けてきていないはずなのに、ビエール・トンミー氏の聴覚は『ユキ』と呼ばれた少女の声を捉えたのだから仕方がない。


(続く)




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