ビエール・トンミー氏とマダム・トンミーの乗る『大師線』の電車は、『港町駅』に着いた。
「『港町駅』ってね、昔は…..」
ビエール・トンミー氏は、また妻に解説を始めた。
「昔は、『コロムビア前駅』だったんだよ」
解説でもしないと『腫れ』がおさまらないのだ。
「何?コロンビアって」
「発音は、『コロンビア』でいいけど、表記は『コロムビア』だよ。日本コロムビアさ」
「ああ、『コロムビア映画』のね」
「いや、日本コロムビアはレコード会社で、『コロムビア映画』とは関係ないのさ」
「なーんだ。じゃ、『ダビンチ・コード』とは関係ないのね。あれって、『コロムビア映画』だったでしょ?」
「舟木一夫だね。都はるみ、島倉千代子もそうだった。水前寺清子、八代亜紀、ちああきなおみ、大川栄策、新沼謙治、細川たかし、松山千春もね」
「みんな、古い人ねえ」
「高嶋ちさ子、氷川きよし、もだよ」
「ふーん」
古い歌手だろうと今のアーティストだろうと、マダム・トンミーには関心がないようであった。
「おお、そうだ。美空ひばりを忘れていた」
「ああ」
「美空ひばりの『港町十三番地』は、ここに因んだ歌なんだそうだ。駅前に、『港町十三番地』の歌碑もできたらしいよ。昔、日本コロムビアの川崎工場がここにあったんだ。だから、駅名も『コロムビア前駅』だったらしい」
「ふーん。ふぁあああ」
マダム・トンミーは、欠伸をした。しかし、いいのだ。こんな話をしていると『腫れ』がおさまる。
『♪♫♬….』
ホームに音楽が流れた。『港町十三番地』である。
「おお、そうだ。『コロムビア』と云えば……」
(続く)
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