「(ふん、スケベ!)」
その視線は、そう云っていた。少なくともビエール・トンミー氏には、そう聞こえた。
視線が口をきく、というのも妙であるが、ビエール・トンミー氏の聴覚はそう捉えたのだから仕方がない。
「(ん?…誰だ?)」
「何が、『Cook Do®️』よ。『Cock Do?』でしょ、アンタは!」
「(え?ええ?……)」
「『Cook Do®️』エプロンで隠したって分るわ。『Cockは口ほどにモノを云い』ってね」
「(『Cock』?)」
「ママを見て妄想したのね?」
「(ママ?)」
「真横からだと、歴然よ!膨らんでるじゃないの!」
「(真横?)」
ビエール・トンミー氏は横を向いた。その瞬間、
「ふん!」
とそっぽを向いた少女がいた。
「(『ユキ』….ちゃん….)」
『ユキ』と呼ばれた少女である。『内田有紀』に酷似した女性の娘である。ボーイッシュであった10代の『内田有紀』にそっくりな美少女であった。
「(ハッ!)」
その時になって初めて、ビエール・トンミー氏は、自身がつけたエプロンを見た。
「(ハッ!ハッ!)」
エプロンの下部のある部分が膨らんでいた。『ユキ』と呼ばれた少女は、そのことを指摘していたのだ。その膨らみは、上から見るよりも真横から見た方がよりハッキリしているであろう。
「(いや、違う!違うんだ、『ユキ』ちゃん!)」
ビエール・トンミー氏は、すでにそっぽを向いた少女に必死に語りかけた。勿論、心の中で、である。
「(違うんだよ、『ユキ』ちゃん!この膨らみは、『有紀』さん、いや、君のママを見たからではなく、ああ、いや、少なくとも今のこの膨らみは、君のママを見たからではなくって….)」
その時、…….
「(…..?)」
ビエール・トンミー氏はまたまた、何かに射抜かれているのを感じた。
(続く)
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