「『ミニテル・ローズ』ってね」
ビエール・トンミー氏とマダム・トンミーの乗る『大師線』の電車の窓からは、高層マンションが見え、次いで、工場のような建物が見えてきた。
「ピンク・サービスなのさ」
「あらま」
「インターネットだって、ピンクなサービスは一杯あるだろ?」
「ええ、そうね。アタシは見たことないけど。アータは?」
しまった!ヤビ蛇だった。
「エヴァの奴が云うにはさ」
妻の質問を無視して解説を続けた。
「どんなメディアも、成功するメディアは、黎明期には、ピンク関係のものがあるんだそうだ」
「そうかしら?」
「ビデオが普及したのも、当初はエロ・ビデオが貢献したって、エヴァの奴が云っていた」
「ふううん、そうなんだ。じゃ、『コロムビア・ローズ』も『ピンク』だったの?『爆報!THE フライデー』に出てた人、そうは見えなかったけど」
「ああ、『コロムビア・ローズ』の『ローズ』は、『ピンク』のじゃないんだ。『東京ローズ』さ」
「『東京ローズ』?」
「太平洋戦争中に、日本軍が連合国向けに流したプロパガンダ放送の女性アナウンサーだよ」
「ああ、見たことあるわ、ドキュメンタリーで。アメリカ軍がつけた名前でしょ?」
「ああ、そうだ。声だけだったけど、君みたいに魅力的だったんだろう」
「あら、ま。うふ!」
ビエール・トンミー氏とマダム・トンミーの乗る『大師線』の電車は、『鈴木町駅』に近づいていた。
(続く)
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