ビエール・トンミー氏の鼻腔が拡がっていた。
「(んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏の眼は、もう見えなくなっていた。眼に調理体験室や妻を含めそこにいる人たちの姿は映ってはいたが、総ての神経が鼻に集中していた。
「(んぐっ!んぐっ!んぐっ!んぐっ!)」
ただ、股間だけは、『別人格』を持っていた。
「(ああ、これは….そうか、あれだ!)」
ビエール・トンミー氏の鼻腔は、それまで嗅いだことのない香りをその内肌に吸い込んでいた。
「(『フェブリナ』……)」
ビエール・トンミー氏は、口中で聞きなれぬ言葉を呟いた。
(続く)
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