「でもねえ、専務理事がキツイ体臭でいいのかなあ、って思うんだ」
『ユキ』と呼ばれた少女は、父親の体臭について、意味がよく分からないことを云い出した。
「(専務理事?)」
ビエール・トンミー氏は、またもや首を傾げた。
「あ、そうか、オジサン知らないんだね。パパって信用組合の専務理事なんだよ」
「(ああ、そういうことか。専務理事ってことは、No.2かNo.3くらいに偉いんだな)」
「(そうだよ。アタシの叔父様が理事長なんだ。ママの妹、つまり叔母様のご主人が、理事長なんだよ。その叔父様に頼まれて、パパは信用組合の専務理事になったんだ。いつも蝶ネクタイした紳士なんだよ」
「(んん?......どこかで聞いたことのあるような…..)」
「でも、ヘンタイのオジサン、信用組合って知ってる?」
「(ああ、勿論。一種の銀行だね。まあ、『普通銀行』ではないけどね)」
「へええ、すっごーい!オジサン、ヘンタイなのに、よく知ってるんだねえ」
「(まああ…..一応、商学部出身だからね、ハンカチ大学の)」
と、云ってしまって(とは云っても、心の中の言葉として、であるが)、ビエール・トンミー氏は、頬をうっすらとピンクに染めた。
「(ああ、ボクは、嘘をついてしまった…….)」
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿