2019年1月29日火曜日

【ビエールのオトナ社会科見学】ホイコーローを作る[その95]







「でもねえ、専務理事がキツイ体臭でいいのかなあ、って思うんだ」

『ユキ』と呼ばれた少女は、父親の体臭について、意味がよく分からないことを云い出した。

「(専務理事?)」

ビエール・トンミー氏は、またもや首を傾げた。

「あ、そうか、オジサン知らないんだね。パパって信用組合の専務理事なんだよ」
「(ああ、そういうことか。専務理事ってことは、No.2かNo.3くらいに偉いんだな)」
「(そうだよ。アタシの叔父様が理事長なんだ。ママの妹、つまり叔母様のご主人が、理事長なんだよ。その叔父様に頼まれて、パパは信用組合の専務理事になったんだ。いつも蝶ネクタイした紳士なんだよ」



「(んん?......どこかで聞いたことのあるような…..)」
「でも、ヘンタイのオジサン、信用組合って知ってる?」
「(ああ、勿論。一種の銀行だね。まあ、『普通銀行』ではないけどね)」
「へええ、すっごーい!オジサン、ヘンタイなのに、よく知ってるんだねえ」
「(まああ…..一応、商学部出身だからね、ハンカチ大学の)」

と、云ってしまって(とは云っても、心の中の言葉として、であるが)、ビエール・トンミー氏は、頬をうっすらとピンクに染めた。

「(ああ、ボクは、嘘をついてしまった…….)」


(続く)




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